自然災害の短期的経済影響を評価するための空間的一般均衡モデル構築の取り組み

本稿では,自然災害による経済被害を評価するための手法の一つとして,空間的一般均衡モデル(SCGE)モデルを用いた分析アプローチを紹介する.SCGEモデルは,災害時において発生するサプライチェーンの被害や需要の変化についても評価できる可能性を有する.しかし,災害への適用可能性の検討を意図した研究はほとんど存在していない.希少な被害事例データを適切に活用し,災害影響分析に適したSCGEモデルの基本設定に反映するための方法論が求められている.このためには,入力条件となる生産能力の減少を経済センサス等を用いて詳細な空間スケールで把握するとともに,SCGEモデルについても均衡条件の吟味や適切なパラメータ...

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Published in日本統計学会誌 Vol. 49; no. 1; pp. 61 - 82
Main Authors 梶谷, 義雄, 多々納, 裕一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本統計学会 30.09.2019
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Summary:本稿では,自然災害による経済被害を評価するための手法の一つとして,空間的一般均衡モデル(SCGE)モデルを用いた分析アプローチを紹介する.SCGEモデルは,災害時において発生するサプライチェーンの被害や需要の変化についても評価できる可能性を有する.しかし,災害への適用可能性の検討を意図した研究はほとんど存在していない.希少な被害事例データを適切に活用し,災害影響分析に適したSCGEモデルの基本設定に反映するための方法論が求められている.このためには,入力条件となる生産能力の減少を経済センサス等を用いて詳細な空間スケールで把握するとともに,SCGEモデルについても均衡条件の吟味や適切なパラメーター値の設定が必要となる.筆者らは,東日本大震災後のサプライチェーン被害の大きかった数ヶ月間の経済活動を対象にSCGEモデルを構築しているが,鍵となる地域間の財・サービスの代替弾力性の程度について改良の余地があるなど課題も多い.本稿では,これまでのSCGEモデルを用いた研究について概括するとともに,統計的に有意なモデルの改善をもたらす代替弾力性の値について検討した結果を報告する.
ISSN:0389-5602
2189-1478
DOI:10.11329/jjssj.49.61