ヒト小臼歯における脱灰とマイクロクラックの進行の検討 マイクロCTを用いたアブフラクションモデルによる解析

目的 : 咬耗や加齢変化によってエナメル質の菲薄化を呈することがある. さらにエナメル質が菲薄化した歯に過度な咬合力が加わると, エナメル質から象牙質へ達するマイクロクラックが生じる可能性がある. また, 咬合が関与する非う蝕性の歯頸部硬組織欠損 (NCCL) は, アブフラクションと定義される. アブフラクションの発生とマイクロクラックとの関係については不明な点が多く, 脱灰も関与しているという報告がある. 本研究では, セメントエナメル境 (CEJ) 付近の脱灰とマイクロクラックの進行の関係について, 3次元的に非破壊で観察可能なマイクロCTを用いて検討を行った. 材料と方法 : NCCL...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 89 - 95
Main Authors 半場, 秀典, 二階堂, 徹, 村松, 敬, 中村, 圭喜, 古澤, 成博, 田上, 順次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 30.04.2017
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.60.89

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Summary:目的 : 咬耗や加齢変化によってエナメル質の菲薄化を呈することがある. さらにエナメル質が菲薄化した歯に過度な咬合力が加わると, エナメル質から象牙質へ達するマイクロクラックが生じる可能性がある. また, 咬合が関与する非う蝕性の歯頸部硬組織欠損 (NCCL) は, アブフラクションと定義される. アブフラクションの発生とマイクロクラックとの関係については不明な点が多く, 脱灰も関与しているという報告がある. 本研究では, セメントエナメル境 (CEJ) 付近の脱灰とマイクロクラックの進行の関係について, 3次元的に非破壊で観察可能なマイクロCTを用いて検討を行った. 材料と方法 : NCCLを有するヒト抜去小臼歯8本を使用した. CEJ下1mm根尖よりの範囲を除く全根面にネイルバーニッシュを塗布し, 歯を人工脱灰液中に0, 7, 14日間浸漬後, マイクロCT (SMX-100CT, 島津製作所) を用いて撮影を行った. 撮影後のデータを骨梁構造計測ソフト (TRI/3DBON, ラトック) により3次元構築し, 歯冠全体のミネラル変化およびマイクロクラックを解析した. また, 観察後の試料を包埋, 半切し, 研磨後にSEM観察を行った. マイクロCTで得られた歯冠側面中央部のエナメル質に観察されたマイクロクラックの最大幅を求め, 統計学的処理を行った. 結果 : 脱灰前後のマイクロCT像を比較した結果, 全体的なミネラル低下を示し, 特に歯冠側面やCEJ下根面の顕著なミネラル低下が認められた. 脱灰の進行により, CEJ付近のエナメル質が菲薄化して残存する形態が観察された. マイクロクラック幅の計測の結果, 14日間脱灰後の幅は7日後よりも有意に増加した (p<0.05). NCCL付近のSEM像とマイクロCT像において, 同部位に数μm以上のマイクロクラックが観察された. 結論 : 本研究で使用したNCCLを有する小臼歯において, マイクロクラックに沿って脱灰が進行することが示唆された. またマイクロCT解析は, 3次元的に脱灰およびマイクロクラックを観察することができ, アブフラクションを想定した解析モデルの経時的な観察に有用であることが示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.60.89