「境界なき災害」-人文系自然災害科学から見たコロナ禍

本稿は,全世界を席巻している新型コロナウイルス(COVID-19)の感染蔓延が,人文系の自然災害科学研究に対して投げかけている課題を,速報としてまとめたものである。コロナ禍 は,従来の人文系災害研究が置いてきた3つの大きな理論的前提に対してチャレンジするものである。第1は,ハザードマップに典型的に表れているような,空間的な境界―「ゾーニング」(zoning)―に立脚した災害マネジメントに対するチャレンジである。第 2は,よく知られた「災害マネジメントサイクル」に象徴される時間的な境界―「フェージング」(phasing)―に立脚し た災害マネジメントに対するチャレンジである。最後は,専門家対非専...

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Published in自然災害科学 Vol. 39; no. 2; pp. 89 - 100
Main Author 矢守, 克也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本自然災害学会 2020
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Summary:本稿は,全世界を席巻している新型コロナウイルス(COVID-19)の感染蔓延が,人文系の自然災害科学研究に対して投げかけている課題を,速報としてまとめたものである。コロナ禍 は,従来の人文系災害研究が置いてきた3つの大きな理論的前提に対してチャレンジするものである。第1は,ハザードマップに典型的に表れているような,空間的な境界―「ゾーニング」(zoning)―に立脚した災害マネジメントに対するチャレンジである。第 2は,よく知られた「災害マネジメントサイクル」に象徴される時間的な境界―「フェージング」(phasing)―に立脚し た災害マネジメントに対するチャレンジである。最後は,専門家対非専門家という役割上の境界―「ポジショニング」(positioning)―に立脚した災害マネジメントに対するチャレンジである。 人文系の自然災害科学の改善・見直しに,今コロナ禍から我々が学びつつある教訓を活かすための方途についてもあわせて論じた。
ISSN:0286-6021
2434-1037
DOI:10.24762/jndsj.39.2_89