2年間の急速な発育が遡及的に検討できたS状結腸癌の1例

症例は69歳女性で,下腹部痛・血便を主訴に来院した.注腸造影大腸内視鏡にて2型進行S状結腸癌と診断し,S状結腸切除術を施行した.病理学的には,ss,n1(+)の中分化腺癌であった.他院での2回の注腸造影写真をretrospectiveに検討すると,23カ月前に,ほぼ同一の部位に長径0.6cmのIsp型隆起性病変を認め,また8カ月前には,同部位に長径3.1cmの隆起性病変を認めていた.tumor doubling time(DT)は全経過で76.4日と極めて短期間であり,また前半で64.4日,後半で117.9日とむしろ後半で延長していた.分子生物学的検査では,p53蛋白の異常蓄積を認め,Ki-6...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 51; no. 1; pp. 35 - 40
Main Authors 有田, 道典, 岡島, 正純, 浅原, 利正, 小林, 理一郎, 吉川, 雅文, 児玉, 真也, 小島, 康知, 豊田, 和広, 川堀, 勝史, 土肥, 雪彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 1998
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Summary:症例は69歳女性で,下腹部痛・血便を主訴に来院した.注腸造影大腸内視鏡にて2型進行S状結腸癌と診断し,S状結腸切除術を施行した.病理学的には,ss,n1(+)の中分化腺癌であった.他院での2回の注腸造影写真をretrospectiveに検討すると,23カ月前に,ほぼ同一の部位に長径0.6cmのIsp型隆起性病変を認め,また8カ月前には,同部位に長径3.1cmの隆起性病変を認めていた.tumor doubling time(DT)は全経過で76.4日と極めて短期間であり,また前半で64.4日,後半で117.9日とむしろ後半で延長していた.分子生物学的検査では,p53蛋白の異常蓄積を認め,Ki-67が強陽性であり,急速な発育との関連が示唆された.今後は,遡及的検討例において,DTと分子生物学的検査との相関についてさらに集計・検討が必要と考えられた.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.51.35