北見市大島2遺跡の擦文文化の竪穴住居建築材にみられた木材利用法の樹種間差

北海道北見市大島2遺跡で調査された擦文文化後期~晩期(約11~12世紀)の竪穴住居跡4軒より出土し,用途推定と樹種同定の結果については既に報告済みの計166点の炭化材について,肉眼観察と年輪幅測定を実施した。166点中97点の試料について,原木の径級と加工法を推定することができ,このうち95点は小径の丸木材と成木の割材に分けられた。小径の丸木材は,スノコ状の構築物(敷物と推定)に多用され,約3分の2がヤマナラシ属であった。一方,成木の割材は垂木などに利用され,コナラ属が約3分の2を占めていた。この結果から,原木の径級と加工法が建築における木材の用途や樹種選択に影響を与えていたと考えられる。また...

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Published in木材学会誌 Vol. 68; no. 3; pp. 117 - 123
Main Authors 千原, 鴻志, 佐野, 雄三, 熊木, 俊朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本木材学会 25.07.2022
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Summary:北海道北見市大島2遺跡で調査された擦文文化後期~晩期(約11~12世紀)の竪穴住居跡4軒より出土し,用途推定と樹種同定の結果については既に報告済みの計166点の炭化材について,肉眼観察と年輪幅測定を実施した。166点中97点の試料について,原木の径級と加工法を推定することができ,このうち95点は小径の丸木材と成木の割材に分けられた。小径の丸木材は,スノコ状の構築物(敷物と推定)に多用され,約3分の2がヤマナラシ属であった。一方,成木の割材は垂木などに利用され,コナラ属が約3分の2を占めていた。この結果から,原木の径級と加工法が建築における木材の用途や樹種選択に影響を与えていたと考えられる。また,コナラ属の平均年輪幅は他樹種・群に比べて小さく約0.58mmであった。この結果は,コナラ属材は遺跡周辺の天然生林から採取され,適度な強度と加工性を備えていたために多用されたことを示唆している。
ISSN:0021-4795
1880-7577
DOI:10.2488/jwrs.68.117