一時的腋窩-大腿動脈バイパス下に上・下腸間膜動脈再建を行った腹部アンギーナの 1 例

症例は45歳の女性で,約 1 年前より反復する腹痛・腸閉塞症状のため当院に入院となった.術前の腹部血管造影検査では腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈の 3 枝の根部は描出されず,腸管の血流は造影後期に内腸骨動脈領域からの側副血行路を介したわずかなものが確認されただけであった.手術時には,腹腔動脈は索状化していたが,他の 2 枝は人工血管を用いた腹部大動脈からの血行再建が可能であった.腹部大動脈との吻合は良好な流入口作成のため大動脈遮断下で行った.これに先行して一時的腋窩-大腿動脈バイパスの補助手段を用い,内腸骨動脈領域を介した腸管への血流を確保した.また,併存していた小腸狭窄に対して,切除・...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 16; no. 7; pp. 823 - 826
Main Authors 井上, 仁, 大島, 哲, 前村, 大成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 25.12.2007
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Summary:症例は45歳の女性で,約 1 年前より反復する腹痛・腸閉塞症状のため当院に入院となった.術前の腹部血管造影検査では腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈の 3 枝の根部は描出されず,腸管の血流は造影後期に内腸骨動脈領域からの側副血行路を介したわずかなものが確認されただけであった.手術時には,腹腔動脈は索状化していたが,他の 2 枝は人工血管を用いた腹部大動脈からの血行再建が可能であった.腹部大動脈との吻合は良好な流入口作成のため大動脈遮断下で行った.これに先行して一時的腋窩-大腿動脈バイパスの補助手段を用い,内腸骨動脈領域を介した腸管への血流を確保した.また,併存していた小腸狭窄に対して,切除・吻合もあわせて行った.病理学的検索では,血管壁には主として動脈硬化性所見を,切除腸管には慢性的な血流障害によると考えられる漿膜下組織の高度線維化や血管増生などの所見を認めた.術後経過は良好で腹部症状は軽快した.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.16.823