小腸穿孔術後に発症した粘液水腫性昏睡疑いの1例
症例は72歳の女性で,5年間,甲状腺機能低下症の治療を自己中断していた.腹痛と呼吸苦を主訴に救急搬送され,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.術中所見では絞扼性腸閉塞に起因する小腸穿孔を確認し,病変部小腸を部分切除した.術後にII型呼吸不全の増悪と意識障害(Glasgow Coma Scale:E2V4M5)を認め,粘液水腫性昏睡を強く疑った.重症度は日内変動を示し,CO2ナルコーシスが頻発したため,侵襲的人工呼吸器管理を要し,気管切開を経て術後44日目まで継続した.術後83日目に在宅酸素療法を導入して自宅へ退院した.粘液水腫性昏睡は重度の甲状腺機能低下症を基礎に循環不全,呼吸不全や低体温症...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 10; pp. 1329 - 1333 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2024
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Subjects | |
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ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.85.1329 |
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Summary: | 症例は72歳の女性で,5年間,甲状腺機能低下症の治療を自己中断していた.腹痛と呼吸苦を主訴に救急搬送され,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した.術中所見では絞扼性腸閉塞に起因する小腸穿孔を確認し,病変部小腸を部分切除した.術後にII型呼吸不全の増悪と意識障害(Glasgow Coma Scale:E2V4M5)を認め,粘液水腫性昏睡を強く疑った.重症度は日内変動を示し,CO2ナルコーシスが頻発したため,侵襲的人工呼吸器管理を要し,気管切開を経て術後44日目まで継続した.術後83日目に在宅酸素療法を導入して自宅へ退院した.粘液水腫性昏睡は重度の甲状腺機能低下症を基礎に循環不全,呼吸不全や低体温症等を発症する死亡率の高い疾患である.周術期の発症は稀であるが,重篤な術後合併症となりうる.コントロール不良の甲状腺機能低下症併存例に対する手術時には,粘液水腫性昏睡の発症に注意し,また原因不明の呼吸不全を発見した際に粘液水腫性昏睡を疑うべきである. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.85.1329 |