広域災害時の保健所における公衆衛生マネジメント確立のための災害時健康危機管理支援チームの支援による公衆衛生受援体制の構築および普及に関する検討

目的 東日本大震災以来,大規模災害時には急性期の救命医療に引き続いての医療保健,生活衛生の確保等の公衆衛生対策の重要性が再確認され,保健所への期待感が増大した。しかしながら保健所の取り組みにはいまだ温度差があるため,今後全国の保健所において大規模災害時に標準的な公衆衛生対策が展開されるよう,大規模災害への備えの現状と課題を明らかにし,災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team:以下DHEATと略)の支援を受けて,標準的な対策を実施できるための受援体制の構築および普及について検討した。方法 大規模災害への備えの先進事例の調査を...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 65; no. 8; pp. 399 - 410
Main Authors 宇田, 英典, 中里, 栄介, 宮園, 将哉, 田上, 豊資, 松岡, 宏明, 髙山, 佳洋, 土屋, 久幸, 犬塚, 君雄, 山中, 朋子, 武智, 浩之, 清古, 愛弓, 池田, 和功, 長谷川, 麻衣子, 山田, 全啓, 古屋, 好美, 永井, 伸彦, 前田, 秀雄, 古畑, 雅一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 15.08.2018
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.65.8_399

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Summary:目的 東日本大震災以来,大規模災害時には急性期の救命医療に引き続いての医療保健,生活衛生の確保等の公衆衛生対策の重要性が再確認され,保健所への期待感が増大した。しかしながら保健所の取り組みにはいまだ温度差があるため,今後全国の保健所において大規模災害時に標準的な公衆衛生対策が展開されるよう,大規模災害への備えの現状と課題を明らかにし,災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team:以下DHEATと略)の支援を受けて,標準的な対策を実施できるための受援体制の構築および普及について検討した。方法 大規模災害への備えの先進事例の調査を行い公衆衛生支援・受援体制の基本要素を抽出した。次に,それに基づき作成した調査票により,全国の保健所の取り組みの実態を把握した。それを踏まえ,保健所の現状に応じて段階的に受援体制を整備するためのガイドラインを策定した。さらに,本活動期間中に発生した熊本地震の検証を加味してガイドラインを改訂した。結果 先進事例から把握された公衆衛生支援・受援体制の基本要素は,市町村との情報の共有,受援計画策定,地域,分野別のコーディネーター設置,関係機関,住民総出のリアルな救護訓練,災害医療調整組織の迅速な立ち上げ,民間人材の有効活用,県内支援チームの早期出動等であった。これらに基づく調査で378保健所(回答率78.8%)の回答から把握された大規模災害への保健所の備えは,いまだ多くがマニュアル整備や所内対応訓練にとどまり,医療救護や避難所への公衆衛生支援・受援や情報システムの実働等の対外的な連携,訓練は未実施だったが,DHEAT基礎編研修への参加意向は大きかった。 熊本地震の検証も経て整理された,保健所に求められる大規模災害時の公衆衛生マネジメントは,発災早期からの初動組織の立ち上げ,情報収集,評価,外部支援者の統合指揮,Disaster Medical Assistance Teamから引き継ぐ災害医療コーディネート,市町村と連携した避難所保健衛生支援等であるが,これらをDHEATの支援を受けて標準的に実施できるよう受援体制を平時に整備する必要がある。このためすべての保健所が段階的に取り組めるようにガイドラインを作成した。結論 大規模災害への保健所の備えは,多くが所内対応にとどまり市町村や外部の支援との連携は未着手であるため,すべての保健所においてDHEATの支援を得て標準的な公衆衛生対策を展開できるように訓練や支援経験を重ね,段階的に受援体制の整備を図る必要がある。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.65.8_399