マルチスライスCTが冠動脈瘤の形態的評価に有用であった川崎病罹患疑いの若年者狭心症例

症例は39歳, 男性. 既往歴には特記すべき事項. 冠危険因子は喫煙のみ. 2007年7月より労作時の呼吸困難を自覚し当科受診. ホルター心電図にて労作時のST下降, トレッドミル運動負荷試験にて呼吸困難を伴うII, III, aVF, V4~6誘導のST下降を認めたため労作性狭心症の診断で入院. 入院時, 安静時心電図にはST変化なく, 明らかな凝固·線溶系異常も認めなかった. 冠動脈造影では右冠動脈近位部の冠動脈瘤と瘤近傍の順行性側副血行路, 左前下行枝近位部の完全閉塞, 左回旋枝から右冠動脈と左前下行枝への側副血行路を認めた. 後日施行したマルチスライスCTにて, 右冠動脈の側副血管は瘤...

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Published in心臓 Vol. 41; no. 5; pp. 558 - 564
Main Authors 上村, 竜太, 神谷, 仁孝, 草間, 芳樹, 細川, 雄亮, 小谷, 英太郎, 渋井, 俊之, 中込, 明裕, 新, 博次, 宗像, 亮, 西城, 由之, 吉川, 正智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2009
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.41.558

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Summary:症例は39歳, 男性. 既往歴には特記すべき事項. 冠危険因子は喫煙のみ. 2007年7月より労作時の呼吸困難を自覚し当科受診. ホルター心電図にて労作時のST下降, トレッドミル運動負荷試験にて呼吸困難を伴うII, III, aVF, V4~6誘導のST下降を認めたため労作性狭心症の診断で入院. 入院時, 安静時心電図にはST変化なく, 明らかな凝固·線溶系異常も認めなかった. 冠動脈造影では右冠動脈近位部の冠動脈瘤と瘤近傍の順行性側副血行路, 左前下行枝近位部の完全閉塞, 左回旋枝から右冠動脈と左前下行枝への側副血行路を認めた. 後日施行したマルチスライスCTにて, 右冠動脈の側副血管は瘤直上より瘤を回旋するように描出された. 左前下行枝の閉塞近位部には石灰化を伴う冠動脈瘤が確認され, 冠動脈造影では不十分であった冠動脈瘤の形態的評価にマルチスライスCTが有用であった. 本例は, 川崎病罹患を疑わせる既往が全く存在しないが, 若年者で冠危険因子が喫煙のみにもかかわらず, 石灰化と多発性冠動脈瘤を伴う高度な冠動脈硬化を認めたことから, 幼少時に罹患した川崎病に続発する冠動脈病変により労作性狭心症を発症したものと推測された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.41.558