ハンセン病対策の歴史と現状 日本と世界

「はじめに」 ヨーロッパの中世に始まるハンセン病患者隔離はキリスト教の教義に基づく宗教的隔離であった. それは, 患者の保護を目的に慈愛の心でターミナルケアを行うものであったが, 患者はラザレットの中でその生涯を終えなければならなかった. この様相は人々にハンセン病は隔離される病, 恐怖の病, 暗く陰湿なものというイメージを深く刻みつけた. 14世紀に始まるペストの流行はヨーロッパ史上最大の悲劇となり, 人口の3分の1が死に絶えた. ペストの流行は18世紀まで続き, 19世紀からはコレラも流行した. ペストとコレラの流行に対し, ヨーロッパでは感染症対策を主とした公衆衛生政策を発展させ対抗して...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 87; no. 2; pp. 73 - 90
Main Author 森, 修一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.11.2018
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Summary:「はじめに」 ヨーロッパの中世に始まるハンセン病患者隔離はキリスト教の教義に基づく宗教的隔離であった. それは, 患者の保護を目的に慈愛の心でターミナルケアを行うものであったが, 患者はラザレットの中でその生涯を終えなければならなかった. この様相は人々にハンセン病は隔離される病, 恐怖の病, 暗く陰湿なものというイメージを深く刻みつけた. 14世紀に始まるペストの流行はヨーロッパ史上最大の悲劇となり, 人口の3分の1が死に絶えた. ペストの流行は18世紀まで続き, 19世紀からはコレラも流行した. ペストとコレラの流行に対し, ヨーロッパでは感染症対策を主とした公衆衛生政策を発展させ対抗していった. この結果, ヨーロッパの公衆衛生政策は最大多数の最大幸福を目的として, 少数者への犠牲を強いるものとなり, 細菌学の発展と共に19世紀に確立された. 19世紀, カナダ, ハワイ, ノルウェーおよびドイツにハンセン病が流行した.
ISSN:1342-3681
1884-314X
DOI:10.5025/hansen.87.73