スポーツにおける女性差別とトランスジェンダー排除の関係性

近年,トランスジェンダーとスポーツの関係性に注目が集まっている.特に,トランス女性が女子スポーツに参加することに対する批判が高まり,世界陸連など,いくつかの国際統括組織が実質上のトランス排除を決定している.米国では,2020年以降,学校スポーツにおいてトランスジェンダーの選手を実質排除する法律が次々と成立しており,トランスジェンダーのスポーツ参加をめぐる権利は危機的状況におかれている.しばしば女子スポーツを守ることがトランス排除の理由として挙げられるが,トランス排除のロジックと制度は,スポーツにおける女性差別のロジックと制度を踏襲するものである.本論では,まずスポーツにおけるセックス・コントロ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in社会学評論 Vol. 74; no. 4; pp. 624 - 642
Main Author 井谷, 聡子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本社会学会 2024
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0021-5414
1884-2755
DOI10.4057/jsr.74.624

Cover

More Information
Summary:近年,トランスジェンダーとスポーツの関係性に注目が集まっている.特に,トランス女性が女子スポーツに参加することに対する批判が高まり,世界陸連など,いくつかの国際統括組織が実質上のトランス排除を決定している.米国では,2020年以降,学校スポーツにおいてトランスジェンダーの選手を実質排除する法律が次々と成立しており,トランスジェンダーのスポーツ参加をめぐる権利は危機的状況におかれている.しばしば女子スポーツを守ることがトランス排除の理由として挙げられるが,トランス排除のロジックと制度は,スポーツにおける女性差別のロジックと制度を踏襲するものである.本論では,まずスポーツにおけるセックス・コントロールの制度の歴史について確認する.その上で,スポーツにおけるトランス排除の仕組みについて,2020年以降いわゆる「反トランス法」が急速に広がっている米国に着目しながら関連する法律を整理することを通して,現在進行するトランス排除とスポーツにおける女性差別の関係を考察する.最後に,教育の一部として提供される学校スポーツからトランスジェンダーの子供や若者が排除されることの問題性について論じる.
ISSN:0021-5414
1884-2755
DOI:10.4057/jsr.74.624