海岸砂丘植生の保全推進にむけた3つのコメント

海岸砂丘植生・植物は,すでに1980年代から全国的に衰退が著しい.その保全のためには,以下の3点に留意する必要がある.第一に,海岸砂丘植物の研究は100年以上の歴史のある領域であり,また環境省の分類では「自然草原」に入り,植生自然度10という最も自然度の高い植生であるなど,学術上・保全上貴重な自然植生帯である.第二に,日本の海岸砂丘は様々な開発行為により,そのほとんどがすでに失われ,今後地球温暖化により海面が1m上昇すると,日本の砂浜面積の90%が消失すると予測されている.しかし海岸砂丘植物はレッドリストにほとんど掲載されておらず,社会的・学術的認知度が非常に低い.東日本大震災による地盤沈下・...

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Published in景観生態学 Vol. 19; no. 1; pp. 51 - 56
Main Author 石川, 真一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本景観生態学会 2014
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ISSN1880-0092
1884-6718
DOI10.5738/jale.19.51

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Summary:海岸砂丘植生・植物は,すでに1980年代から全国的に衰退が著しい.その保全のためには,以下の3点に留意する必要がある.第一に,海岸砂丘植物の研究は100年以上の歴史のある領域であり,また環境省の分類では「自然草原」に入り,植生自然度10という最も自然度の高い植生であるなど,学術上・保全上貴重な自然植生帯である.第二に,日本の海岸砂丘は様々な開発行為により,そのほとんどがすでに失われ,今後地球温暖化により海面が1m上昇すると,日本の砂浜面積の90%が消失すると予測されている.しかし海岸砂丘植物はレッドリストにほとんど掲載されておらず,社会的・学術的認知度が非常に低い.東日本大震災による地盤沈下・大津波が沿岸域の自然植生に及ぼしている影響をモニタリング調査し,レッドリストにおける海岸砂丘植物のランク評価をやり直す必要がある.第三に,海岸植物図鑑の復活など,研究成果・教育普及活動を推進し社会的理解を深める必要がある.また海岸法の改正で「海岸環境の整備と保全」が必須となり,その計画は各自治体が策定することとなったので,工学系・実学系の研究者および国土交通省と関連機関・自治体と生態学分野の共同研究・共同事業を実施していくことが,海岸砂丘植生・植物の保全に不可欠である.
ISSN:1880-0092
1884-6718
DOI:10.5738/jale.19.51