腎機能障害を合併した腹部大動脈瘤に対する炭酸ガス造影を併用したstent graft内挿術の検討

【背景】腹部大動脈瘤(AAA)に対するstent graft内挿術(EVAR)は同疾患に対する低侵襲手術として広く行われている。しかしこの手術にはヨード造影剤が必須であり,腎機能障害を合併した症例ではその治療法の選択に躊躇することがある。当科では腎機能障害を合併したAAAに対し,術後腎機能の悪化をきたさないために炭酸ガス造影を併用したEVARを行っている。【対象】2007年5月から2011年5月までに施行したEVAR 115例のうち,術前eGFR 30 ml/min以下の4症例(CD群)に炭酸ガス造影を併用し,30 ml/min以上の症例(IC群)ではヨード造影剤のみで造影しEVARを行った。...

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Published in脈管学 Vol. 52; no. May; pp. 247 - 252
Main Authors 大谷, 則史, 角浜, 孝行, 数野, 圭, 中西, 仙太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脈管学会 10.05.2012
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ISSN0387-1126
1880-8840
DOI10.7133/jca.52.247

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Summary:【背景】腹部大動脈瘤(AAA)に対するstent graft内挿術(EVAR)は同疾患に対する低侵襲手術として広く行われている。しかしこの手術にはヨード造影剤が必須であり,腎機能障害を合併した症例ではその治療法の選択に躊躇することがある。当科では腎機能障害を合併したAAAに対し,術後腎機能の悪化をきたさないために炭酸ガス造影を併用したEVARを行っている。【対象】2007年5月から2011年5月までに施行したEVAR 115例のうち,術前eGFR 30 ml/min以下の4症例(CD群)に炭酸ガス造影を併用し,30 ml/min以上の症例(IC群)ではヨード造影剤のみで造影しEVARを行った。【結果】CD群は全例男性で平均年齢は74歳(66-83歳),術関連死/合併症発症例は認めなかった。術前平均eGFRはCD群で23.2 ml/minであったのに対しIC群は57.9 ml/minであった。術前,術直後,第1/3/5病日の血中クレアチニン値はCD:IC群で2.3/1.31,2.26/1.10,2.57/1.19,2.59/1.23,2.43/1.22 mg/dlであった。ヨード造影剤使用量の中央値はCD:IC=48.5:182 mlで,明らかにCD群で少量となった。CD群で術後急性期に透析を施行した症例はいなかった。平均在院日数は両群とも10日であった。【結論】腎機能障害を合併したAAAに対し炭酸ガス造影を併用したEVARは,腎機能を悪化させることなく安全に行うことができ,腎機能障害患者にも透析を導入することなく施行できる可能性があると考えられた。
ISSN:0387-1126
1880-8840
DOI:10.7133/jca.52.247