腹部大動脈瘤切迫破裂との鑑別を要した内ヘルニア嵌頓の1例

症例は68歳男性で,3時間前に発症した急激な上腹部痛を主訴に前医を受診した.造影CT検査で腎動脈下に60 mmの腹部大動脈瘤と少量の腹水を認め,腹部大動脈瘤切迫破裂として当院へ紹介搬送された.緊急開腹術の方針としたが,開腹時に膀胱直腸窩近傍を横走する索状物があり,これによる小腸の嵌頓と拡張を認めた.索状物を切離し,内ヘルニア嵌頓を解除した.腸管壊死の所見はないため腸管切除を行わず,閉腹して手術を終了した.上腹部痛は術後速やかに消失した.内ヘルニア解除後24日目に腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った.術後経過は良好で人工血管置換術後9日目に退院となった.内ヘルニア嵌頓は比較的稀な疾患ではあ...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 50; no. 5; pp. 314 - 316
Main Authors 佐々木, 花恵, 小渡, 亮介, 近藤, 慎浩, 川村, 知紀, 皆川, 正仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.09.2021
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Summary:症例は68歳男性で,3時間前に発症した急激な上腹部痛を主訴に前医を受診した.造影CT検査で腎動脈下に60 mmの腹部大動脈瘤と少量の腹水を認め,腹部大動脈瘤切迫破裂として当院へ紹介搬送された.緊急開腹術の方針としたが,開腹時に膀胱直腸窩近傍を横走する索状物があり,これによる小腸の嵌頓と拡張を認めた.索状物を切離し,内ヘルニア嵌頓を解除した.腸管壊死の所見はないため腸管切除を行わず,閉腹して手術を終了した.上腹部痛は術後速やかに消失した.内ヘルニア解除後24日目に腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った.術後経過は良好で人工血管置換術後9日目に退院となった.内ヘルニア嵌頓は比較的稀な疾患ではあるが,本例の経過から開腹歴のない症例においても,血性腹水貯留を伴う急性腹症として発症する点において,内ヘルニア嵌頓が腹部大動脈瘤切迫破裂との鑑別診断として重要であると考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.50.314