先天性QT延長症候群3型患児に対し歯科治療時の全身管理を行った1例

心肺停止後に先天性QT延長症候群;Long QT syndrome:LQTS 3型(LQT3)と診断され,皮下植込み型除細動器植込術を施行された患児の歯科治療時の全身管理を経験した.患者は6歳4カ月の男児で,身長126.8cm,体重25.6kgであった.全顎的歯科治療を目的に本院小児歯科を受診し,全身管理目的で歯科麻酔科に紹介された.約1年前に自宅で突然心肺停止となり,家族と救急隊による救命処置により心拍が再開した.救急病院に搬送後,蘇生後脳症の治療のため当院集中治療室へ転院した.重篤な中枢神経系障害を認めず回復し,心肺停止の原因検索でLQTSが疑われ,遺伝子検査でLQT3と診断された.約2カ...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 45; no. 3; pp. 165 - 171
Main Authors 前尾, 慶, 藤田, 創詩, 高石, 和美, 杉本, 明日菜, 北村, 尚正, 西川, 美佳, 川人, 伸次, 藤原, 茂樹, 岩本, 勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 31.10.2024
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.45.165

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Summary:心肺停止後に先天性QT延長症候群;Long QT syndrome:LQTS 3型(LQT3)と診断され,皮下植込み型除細動器植込術を施行された患児の歯科治療時の全身管理を経験した.患者は6歳4カ月の男児で,身長126.8cm,体重25.6kgであった.全顎的歯科治療を目的に本院小児歯科を受診し,全身管理目的で歯科麻酔科に紹介された.約1年前に自宅で突然心肺停止となり,家族と救急隊による救命処置により心拍が再開した.救急病院に搬送後,蘇生後脳症の治療のため当院集中治療室へ転院した.重篤な中枢神経系障害を認めず回復し,心肺停止の原因検索でLQTSが疑われ,遺伝子検査でLQT3と診断された.約2カ月後に皮下植込み型除細動器植込術を施行され,以降,良好に経過していた.歯科治療に際し,常用薬のフレカイニド酢酸塩とナドロールの服用を継続した.歯科治療中は,QT時間の補正値(QTc)を連続的にモニタリングし,緊急用の体外式除細動器を準備した.歯科用局所麻酔製剤を用いた10回のう蝕処置を含む27回の歯科治療において,QTcは407~522msecで推移し,不整脈を認めず経過した.LQT3は,安静や鎮静,睡眠中にQT延長が誘発され重篤な不整脈を生じやすい.歯科治療中はQTcを連続的にモニタリングし重篤な不整脈発症に留意した.また,二次性にQT延長を引き起こす状態や薬剤の使用,皮下植込み型除細動器に対する電気的干渉を避けることで,安全に歯科治療を行うことが可能であった.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.45.165