待機的治療が可能であった高齢者Valsalva洞動脈瘤破裂の1例

症例は72歳の男性.20年前に検診異常で診断された大動脈弁閉鎖不全症を近医で加療中に,下腿浮腫,体重増加でおおよそ2カ月間内服加療が行われるも症状の改善なく,当院の心臓超音波検査による精査で,無冠状動脈洞に生じたValsalva洞動脈瘤破裂,右房穿破の診断に至った.手術は発症から2カ月半後に待機的に計画され,人工心肺使用下に大動脈弁側と右房側の両側からのアプローチでパッチによる瘻孔閉鎖と,無冠尖の弁尖形態の変性による大動脈弁閉鎖不全症に対しては大動脈弁置換術で手術を完遂し,術後経過良好で術後14日目に自宅退院された.元来,左右シャントを形成し,重篤な心不全症状で発症することもある破裂性Vals...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 53; no. 4; pp. 198 - 202
Main Authors 梅野, 惟史, 濱本, 浩嗣, 宮本, 伸二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2024
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は72歳の男性.20年前に検診異常で診断された大動脈弁閉鎖不全症を近医で加療中に,下腿浮腫,体重増加でおおよそ2カ月間内服加療が行われるも症状の改善なく,当院の心臓超音波検査による精査で,無冠状動脈洞に生じたValsalva洞動脈瘤破裂,右房穿破の診断に至った.手術は発症から2カ月半後に待機的に計画され,人工心肺使用下に大動脈弁側と右房側の両側からのアプローチでパッチによる瘻孔閉鎖と,無冠尖の弁尖形態の変性による大動脈弁閉鎖不全症に対しては大動脈弁置換術で手術を完遂し,術後経過良好で術後14日目に自宅退院された.元来,左右シャントを形成し,重篤な心不全症状で発症することもある破裂性Valsalva洞動脈瘤は非常に稀な疾患である.発症機序は,先天的なValsalva洞の組織脆弱性が原因とされ,破裂に至る症例は40歳代ごろまでの比較的若年層であることが一般的である.本症例は72歳という高齢発症であり,さらに急激な心不全症状の進行なく,待機手術が可能であった非常に稀有な経過を辿った症例として,文献的考察も含め報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.53.198