うつ病に関連した脳部位と最新の診断治療
うつ病は世界的規模で増加を続けており、その対策が最重要視されている疾患である。本邦においても厚労省が、これまでの4疾病にうつ病などの精神疾患を加えて5疾病5事業として重点対策に乗り出している。うつ病の発症要因には遺伝生育的要因、心理社会的要因、器質的(身体的)要因などが重要であるが、脳内で起こっている神経生物学的要因が次々に解明されてきている。最近の研究では、従来のモノアミン仮説に加えて、BDNF(脳由来神経栄養因子)の減少による海馬神経障害仮説、DLPFC(背外側前頭前野)の機能低下と扁桃体や帯状回膝下部(Cg25)の活動亢進などが示されている。うつ病は「こころの病気」というより「脳の病気」...
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Published in | 国際生命情報科学会誌 Vol. 37; no. 2; p. 163 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
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国際生命情報科学会
2019
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Subjects | |
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Summary: | うつ病は世界的規模で増加を続けており、その対策が最重要視されている疾患である。本邦においても厚労省が、これまでの4疾病にうつ病などの精神疾患を加えて5疾病5事業として重点対策に乗り出している。うつ病の発症要因には遺伝生育的要因、心理社会的要因、器質的(身体的)要因などが重要であるが、脳内で起こっている神経生物学的要因が次々に解明されてきている。最近の研究では、従来のモノアミン仮説に加えて、BDNF(脳由来神経栄養因子)の減少による海馬神経障害仮説、DLPFC(背外側前頭前野)の機能低下と扁桃体や帯状回膝下部(Cg25)の活動亢進などが示されている。うつ病は「こころの病気」というより「脳の病気」としての理解も必要である。近年、脳の病態生理に基づいた新しい診断法や治療的試みが多くなされている。その中で、光トポグラフィー(NIRS)検査は、日本発の新しい診断技術であり、簡便で侵襲性がなく、うつ病と双極性障害の鑑別に有用である。また、演者らの研究において、うつ病が軽快すると左背外側前頭前野の血流が有意に増加することも明らかになっており、治療効果の判定にも有用であると考えている。薬物療法以外の身体的治療においては、海外においては脳の機能変化を是正するような刺激療法として反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)、磁気けいれん療法(MST)、深部脳刺激療法(DBS)などが行われている。本邦においてもrTMS が2019年6月からの保険適応になり、治療の選択肢が増えたことは福音である。 |
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ISSN: | 1341-9226 2424-0761 |
DOI: | 10.18936/islis.37.2_163 |