痙縮の疫学と治療

痙縮は脳卒中・頭部外傷などの中枢神経障害に伴う筋緊張亢進を主体とし, 脳神経外科医が日常診療でしばしば遭遇する神経症状である.  日本での痙縮の正確な有病率はわかっていないが, 海外の報告では, 脳卒中の35%以上, 重度の頭部外傷の75%の患者が痙縮を呈すると報告されている. 日本の脳卒中患者は2014年の調査では約118万人と報告されており, 痙縮患者だけでも41万人以上いることとなる. また脳卒中後以外の原因に基づく重度痙縮症例も8万人以上いると推計されている. 現在までボツリヌス療法は約5万症例, ITB療法は約1,700症例にとどまっており, これらの治療の恩恵を受けている患者はまだ...

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Published in脳神経外科ジャーナル Vol. 26; no. 12; pp. 882 - 891
Main Authors 布川, 知史, 吉岡, 宏真, 加藤, 天美, 内山, 卓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科コングレス 2017
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ISSN0917-950X
2187-3100
DOI10.7887/jcns.26.882

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Summary:痙縮は脳卒中・頭部外傷などの中枢神経障害に伴う筋緊張亢進を主体とし, 脳神経外科医が日常診療でしばしば遭遇する神経症状である.  日本での痙縮の正確な有病率はわかっていないが, 海外の報告では, 脳卒中の35%以上, 重度の頭部外傷の75%の患者が痙縮を呈すると報告されている. 日本の脳卒中患者は2014年の調査では約118万人と報告されており, 痙縮患者だけでも41万人以上いることとなる. また脳卒中後以外の原因に基づく重度痙縮症例も8万人以上いると推計されている. 現在までボツリヌス療法は約5万症例, ITB療法は約1,700症例にとどまっており, これらの治療の恩恵を受けている患者はまだ少ないと考える.  痙縮治療を発展させるためには, 痙縮に対する治療法の特徴を知り, 患者および患者家族, メディカルスタッフを含めた痙縮治療教育とリハビリテーションを中心とした地域連携の体制作りが重要である.
ISSN:0917-950X
2187-3100
DOI:10.7887/jcns.26.882