運動器疾患患者の睡眠時間と筋力・歩行機能・バランス能力の関係性について

【はじめに、目的】睡眠時間の低下は高齢者の転倒リスクを増加すると言われている。また、年齢と共に睡眠パターンが変化し、バランス感覚や運動機能にも影響を与えるとされている。適切な睡眠時間の確保は高齢者の安全と健康維持に重要と考える。そのため本研究は、睡眠時間と運動機能との関連性を明らかにし、転倒予防の一助とする。【方法】対象者は当院へ来院されている下肢・脊椎の疾患を主疾患とする65歳以上の男女146名 (男性34名女性112名)とした。除外基準は、独歩困難な者、脳血管疾患、認知症、パーキンソン病、過去1年以内に整形外科的手術を受けた者、上肢疾患とした。調査項目は、年齢、性別、睡眠時間、握力、4m歩...

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Published in日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 p. 46
Main Authors 山本, 一輝, 時田, 遥菜, 岡, 知紀, 川口, 桂蔵, 大森, 章一, 石川, 高, 高瀬, 完
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 31.03.2025
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.3.Suppl.No.1.0_46

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Summary:【はじめに、目的】睡眠時間の低下は高齢者の転倒リスクを増加すると言われている。また、年齢と共に睡眠パターンが変化し、バランス感覚や運動機能にも影響を与えるとされている。適切な睡眠時間の確保は高齢者の安全と健康維持に重要と考える。そのため本研究は、睡眠時間と運動機能との関連性を明らかにし、転倒予防の一助とする。【方法】対象者は当院へ来院されている下肢・脊椎の疾患を主疾患とする65歳以上の男女146名 (男性34名女性112名)とした。除外基準は、独歩困難な者、脳血管疾患、認知症、パーキンソン病、過去1年以内に整形外科的手術を受けた者、上肢疾患とした。調査項目は、年齢、性別、睡眠時間、握力、4m歩行テスト、 Timed Up and Go test(TUG)を測定した。睡眠時間の評価はピッツバーグ睡眠質問票日本語版より抜粋し行った。 統計学的処理は、握力・4m歩行テスト・TUGを目的変数とし た重回帰分析を行った。また、交絡因子である年齢・性別を分析モデルに強制投入し調整を行った。睡眠時間は、6時間未満、 6時間以上8時間未満、8時間以上の3つに分け、6時間以上8時間未満を基準とした分析を行った。それぞれの独立変数の有用性は標準偏回帰係数 (β)により判定した。統計解析にはR4.3.2を用い、有意水準は5%とした。【結果】重回帰分析の結果、握力は睡眠時間が6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p<0.05, β=-0.641)、8時間以上 (p<0.05, β=-0.384)で有意に低かった。4m歩行テストは睡眠時間6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p=0.08, β=-0.156)、8時間以上 (p=0.17, β=-0.122)では有意差がなかった。TUGは睡眠時間6時間以上8時間未満と比べ、6時間未満 (p= 0.31, β=0.091)、8時間以上 (p=0.31, β=0.091)では有意差がなかった。交絡因子投入後も、握力は6時間未満 (p<0.05, β=-0.640)、8時間以上 (p<0.05, β=-0.380)で有意差に低かった。【考察】本研究は、睡眠時間6時間未満と8時間以上で握力との関係が認められたが、4m歩行テスト、TUGは睡眠時間6時間未満と8時間以上で関係は認められなかった。握力は、睡眠が筋肉の回復と修復に重要な役割を果たすと言われている。十分な睡眠は成長ホルモンの分泌を促進し、筋力の向上や維持に寄与する。歩行速度とバランス能力に対する睡眠時間の影響が認められなかったのは、筋力だけでなく、神経系の機能、視覚、前庭機能など多くの要因に関わるためと考える。【倫理的配慮】研究の実施にあたり、個人情報の取り扱いには十分配慮したうえで実施した。また、本研究は医療法人社団三水会倫理審査委員会の審査了承を得て実施した。
Bibliography:O - 46
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.3.Suppl.No.1.0_46