予算文化が利益目標のラチェッティングに与える影響―経営者利益予想による実証研究

上司が部下に対して次期の目標値を設定する場合,今期の予実差がしばしば利用される.しかし,このような目標設定はラチェット効果を引き起こす可能性がある.上司はこれを緩和するために,部下に対する目標値を達成困難にしないというコミットメントを実行する必要がある.本研究の目的は,企業組織に固有の予算システムの特徴としての「予算文化」に注目し,その下位概念である「予算厳守」,「目標の難しさ」,「経営陣の注意」,「報酬とのリンク」のそれぞれが,コミットメントの程度に与える影響を検証することにある.分析の結果,「報酬とのリンク」以外の特徴は,コミットメントの程度に影響を与えていた.上司は予算システムの特徴を考...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 Vol. 28; no. 1; pp. 19 - 36
Main Authors 早川, 翔, 妹尾, 剛好, 安酸, 建二, 新井, 康平, 横田, 絵理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本管理会計学会 31.03.2020
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:上司が部下に対して次期の目標値を設定する場合,今期の予実差がしばしば利用される.しかし,このような目標設定はラチェット効果を引き起こす可能性がある.上司はこれを緩和するために,部下に対する目標値を達成困難にしないというコミットメントを実行する必要がある.本研究の目的は,企業組織に固有の予算システムの特徴としての「予算文化」に注目し,その下位概念である「予算厳守」,「目標の難しさ」,「経営陣の注意」,「報酬とのリンク」のそれぞれが,コミットメントの程度に与える影響を検証することにある.分析の結果,「報酬とのリンク」以外の特徴は,コミットメントの程度に影響を与えていた.上司は予算システムの特徴を考慮してコミットメントの程度を決定し,ラチェット効果に対処していることをこの結果は示唆する.
ISSN:0918-7863
2434-0529
DOI:10.24747/jma.28.1_19