講義内での大学生へのオーガナイゼーション・スキル向上プログラムの効果研究

オーガナイゼーションは物(整理整頓)と時間(時間管理)という2つの要素に大別される。大学時代は大いなる可能性を秘めた時期である一方,高校時代からの様々な変化により脆弱性をかかえた時期でもある。特にADHD傾向をもつ大学生にとってはオーガナイゼーションの困難さが躓きの石となる可能性が高い。本研究では日本の現状に鑑みて,講義内で施行可能な10から15分間,8回シリーズからなるオーガナイゼーション・スキル向上プログラムを作成し導入教育科目において新入生に対して実施し,クロスオーバー・デザインで効果を検証した。参加した大学生77名(男性26名)中,前期および後期介入クラスはそれぞれ33,44名で,うち...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in発達心理学研究 Vol. 30; no. 1; pp. 1 - 10
Main Authors 武田, 俊信, 小正, 浩徳, 郷式, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本発達心理学会 2019
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:オーガナイゼーションは物(整理整頓)と時間(時間管理)という2つの要素に大別される。大学時代は大いなる可能性を秘めた時期である一方,高校時代からの様々な変化により脆弱性をかかえた時期でもある。特にADHD傾向をもつ大学生にとってはオーガナイゼーションの困難さが躓きの石となる可能性が高い。本研究では日本の現状に鑑みて,講義内で施行可能な10から15分間,8回シリーズからなるオーガナイゼーション・スキル向上プログラムを作成し導入教育科目において新入生に対して実施し,クロスオーバー・デザインで効果を検証した。参加した大学生77名(男性26名)中,前期および後期介入クラスはそれぞれ33,44名で,うちADHD傾向高群は19名であった。結果,自己記入式オーガナイゼーション尺度の総得点および3つの下位尺度のうち整理整頓困難および時間管理困難で全般に一部留保つきではあるが有意な改善がみられた。またADHD傾向を有していると短時間のプログラムへの反応性が乏しいという仮説は否定された。有意な改善がみられなかった領域があり,またプログラムの効果の質的な分析ができていない,成績やウェルビーイングへの影響が不詳である,など今後の課題は山積しているが,今後も本邦の現状に合わせて大学生のオーガナイゼーション・スキルを支援するプログラムの開発・改良が模索されるべきである。
ISSN:0915-9029
2187-9346
DOI:10.11201/jjdp.30.1