無形資産投資が企業の利益調整行動に与える影響に関する分析―研究開発投資の観点からの分析

本論文は,無形資産への投資規模が大きい企業(無形資産集約企業)の科益調整行動を資金調達の観点から分析することを目的としている.この目的のため,無形資産集約企業においては,経営者が利益を上方に調整するという「利益シグナル仮説」と,逆に経営者が利益を下方に調整するという「節税効果仮説」を設定した.さらに,これらの対立仮説を検証するために,2004年から2008年までの5年間における日本の製造業企業をサンプルとして,裁量的会計発生高を被説明変数とし,無形資産の代理変数である研究開発費売上高比率を説明変数とした重回帰分析を行った.その結果,無形資産集約企業においては,無形資産への投資規模が相対的に小さ...

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Published in管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 Vol. 21; no. 2; pp. 23 - 40
Main Authors 伊藤, 彰敏, 長澤, 賢一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本管理会計学会 31.03.2013
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ISSN0918-7863
2434-0529
DOI10.24747/jma.21.2_23

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Summary:本論文は,無形資産への投資規模が大きい企業(無形資産集約企業)の科益調整行動を資金調達の観点から分析することを目的としている.この目的のため,無形資産集約企業においては,経営者が利益を上方に調整するという「利益シグナル仮説」と,逆に経営者が利益を下方に調整するという「節税効果仮説」を設定した.さらに,これらの対立仮説を検証するために,2004年から2008年までの5年間における日本の製造業企業をサンプルとして,裁量的会計発生高を被説明変数とし,無形資産の代理変数である研究開発費売上高比率を説明変数とした重回帰分析を行った.その結果,無形資産集約企業においては,無形資産への投資規模が相対的に小さい企業(無形資産非集約企業)よりも裁量的に利益の計上を抑え,利益減少型の利益調整を行う傾向があることを確認でき,節税効果仮説と整合する結果となった.さらに,節税効果仮説の頑健性を検証するため,減価償却割合を被説明変数とし,研究開発費売上高比率を説明変数とした重回帰分析を行った.その結果,研究開発費売上高比率と減価償却割合とは正の関係を有し,統計的にも有意となり,節税効果仮説を裏付ける結果となった.
ISSN:0918-7863
2434-0529
DOI:10.24747/jma.21.2_23