菊池寛「受難華」の代筆問題の研究
菊池寛には代筆疑惑を持つ作品がいくつか存在し,連載小説「受難華」がそのなかの1 つである.本研究の目的は,「受難華」の真の著者を明らかにすることである.「受難華」の代筆疑惑は川端康成の証言によって発覚した.川端によれば,「受難華」は横光利一の代筆であるが,他に代筆説を支持する証拠がないため,「受難華」の代筆問題が未だに解決されていない. 本稿では,計量文体学のアプローチで「受難華」の代筆問題を検証した.具体的に,菊池寛と横光利一のそれぞれ32 作品と「受難華」の22 回分の連載(全集では69 節からなるが,ごく短い節もあるため,連載時の回単位で分割した)から集計した読点の打ち方,形態素の品詞タ...
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Published in | データ分析の理論と応用 Vol. 9; no. 1; pp. 1 - 11 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本分類学会
01.08.2020
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2186-4195 2434-3382 |
DOI | 10.32146/bdajcs.9.1 |
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Summary: | 菊池寛には代筆疑惑を持つ作品がいくつか存在し,連載小説「受難華」がそのなかの1 つである.本研究の目的は,「受難華」の真の著者を明らかにすることである.「受難華」の代筆疑惑は川端康成の証言によって発覚した.川端によれば,「受難華」は横光利一の代筆であるが,他に代筆説を支持する証拠がないため,「受難華」の代筆問題が未だに解決されていない. 本稿では,計量文体学のアプローチで「受難華」の代筆問題を検証した.具体的に,菊池寛と横光利一のそれぞれ32 作品と「受難華」の22 回分の連載(全集では69 節からなるが,ごく短い節もあるため,連載時の回単位で分割した)から集計した読点の打ち方,形態素の品詞タグのbigram と文節パターンの特徴量データに対して,階層的クラスター分析,主成分分析,そしてランダムフォレスト,サポートベクターマシンをはじめとする7 つの分類器を用いて統合的に著者判別を行った.その結果,「受難華」の各回は菊池寛の作品だという結論に至った. |
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ISSN: | 2186-4195 2434-3382 |
DOI: | 10.32146/bdajcs.9.1 |