世論調査・意識調査の未回収バイアスの探求 公募モニター型WEB 調査の実態について
「1. はじめに-「確率標本抽出調査」と「非確率標本抽出調査」」統計的無作為標本抽出による日本の世論調査は, 方法の質において世界的高水準を保ってきた(吉野, 2022, 2023a). この「1人1票の民主主義」を象徴する世論調査は, 標本抽出誤差が計算できるという意味で「科学的世論調査」と称される. しかしながら, この30年ほど, 人々の在宅率や調査協力率は急激に低下し, 十分な高回収率を前提とする標本抽出理論の理想からは遠ざかっている(吉野, 2011). 現状は, 有権者全体の意見の推定ではなく, 調査協力してくれた回答者の中だけの意見分布の報告となっている. 平時はともかく, 「ア...
Saved in:
Published in | 行動計量学 Vol. 51; no. 1; pp. 15 - 44 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本行動計量学会
2024
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 「1. はじめに-「確率標本抽出調査」と「非確率標本抽出調査」」統計的無作為標本抽出による日本の世論調査は, 方法の質において世界的高水準を保ってきた(吉野, 2022, 2023a). この「1人1票の民主主義」を象徴する世論調査は, 標本抽出誤差が計算できるという意味で「科学的世論調査」と称される. しかしながら, この30年ほど, 人々の在宅率や調査協力率は急激に低下し, 十分な高回収率を前提とする標本抽出理論の理想からは遠ざかっている(吉野, 2011). 現状は, 有権者全体の意見の推定ではなく, 調査協力してくれた回答者の中だけの意見分布の報告となっている. 平時はともかく, 「アラブの春」や2016年のトランプ大統領誕生など, 普段は政治行動を起こさぬ人々が極度の不満を募らせているのを把握できず, 事変の予兆を見逃す危惧がある(岩崎, 2023;吉野, 2015). 調査に現われる人々, 脱落してしまう人々のプロファイリングは, 政策立案には重要であろう. |
---|---|
ISSN: | 0385-5481 1880-4705 |
DOI: | 10.2333/jbhmk.51.15 |