起立動作に対するハンドリング技術の分析

本研究は,リハビリテーション領域での患者の起立動作の治療に対するハンドリングにおいて,熟練セラピストの可視化することが出来る技を検討した.対象はセラピスト役として18 年目の作業療法士 (以下,熟練者)と作業療法学科学生の2 名,患者役として仮想片麻痺者を想定した健常者2 名とした.再帰性定量化分析より,熟練者は患者の動きに協調し,柔軟性を持ったスキルであることが示唆された.加えて,起立動作の進行に伴い患者との協調関係を質的に変化させていることが示唆された.また,患者との距離を大きくとりながらも,終始,セラピストと患者の距離間を一定にすることで起立動作に重要な前方への運動を誘導していたことが示...

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Published in生態心理学研究 Vol. 11; no. 1; pp. 41 - 44
Main Author 宮本, 一巧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生態心理学会 01.07.2018
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ISSN1349-0443
2434-012X
DOI10.24807/jep.11.1_41

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Summary:本研究は,リハビリテーション領域での患者の起立動作の治療に対するハンドリングにおいて,熟練セラピストの可視化することが出来る技を検討した.対象はセラピスト役として18 年目の作業療法士 (以下,熟練者)と作業療法学科学生の2 名,患者役として仮想片麻痺者を想定した健常者2 名とした.再帰性定量化分析より,熟練者は患者の動きに協調し,柔軟性を持ったスキルであることが示唆された.加えて,起立動作の進行に伴い患者との協調関係を質的に変化させていることが示唆された.また,患者との距離を大きくとりながらも,終始,セラピストと患者の距離間を一定にすることで起立動作に重要な前方への運動を誘導していたことが示唆された.その特徴を支持していたのは上肢運動の自由度を抑え,下肢運動の自由度を大きくするという全身の協応構造にあった.一方,このような身体構造は古武術などの武術的な身体運動の特徴にも見られる.そこで,古武術的な要素を取り入れた他者の上体起こしと一般的なそれを比較した結果,古武術的な上体起こしの方が再帰性とentropy が高かった.これらの高さは熟練者のハンドリングにも示されている.このことから熟練者の技術の「コツ」を表す身体の特徴は,自身の動きとの協調性の高さ,entropy が増大する動作の複雑化を戦略的に取り入れているという点で,古武術的な身体と類似の行動戦略を含んでいると考えられる.
ISSN:1349-0443
2434-012X
DOI:10.24807/jep.11.1_41