「消滅可能性自治体」における高齢者の小さな農業とその意義
本論は,「増田レポート」によって「消滅可能性自治体」のひとつとされた東京都利島村を事例に,高齢者の農業とその意義を明らかにすることを目的とする。利島は,東京都心の南方約130kmに位置する人口300人の離島である。主要農作物は,生産量日本一のツバキ油で,そのほかアシタバ・シドケなどの葉物がわずかながら栽培されている。利島村の農家に聞き取り調査を実施したところ,農家は主に60~80歳代の高齢夫婦であった。高齢夫婦は,ツバキ油の原料となるツバキ実を拾うことと,葉物を生産することで年間100万円程度の所得を得ていた。こうした年間100万円程度の「小さな農業」は,青壮年層ではなく,年金を生計の基盤とし...
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Published in | 地理空間 Vol. 8; no. 2; pp. 305 - 313 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
地理空間学会
2015
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Subjects | |
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ISSN | 1882-9872 2433-4715 |
DOI | 10.24586/jags.8.2_305 |
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Summary: | 本論は,「増田レポート」によって「消滅可能性自治体」のひとつとされた東京都利島村を事例に,高齢者の農業とその意義を明らかにすることを目的とする。利島は,東京都心の南方約130kmに位置する人口300人の離島である。主要農作物は,生産量日本一のツバキ油で,そのほかアシタバ・シドケなどの葉物がわずかながら栽培されている。利島村の農家に聞き取り調査を実施したところ,農家は主に60~80歳代の高齢夫婦であった。高齢夫婦は,ツバキ油の原料となるツバキ実を拾うことと,葉物を生産することで年間100万円程度の所得を得ていた。こうした年間100万円程度の「小さな農業」は,青壮年層ではなく,年金を生計の基盤としている高齢者だからこそ可能である。つまり,高齢者による「小さな農業」が,利島村の地域農業を支えている。 |
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ISSN: | 1882-9872 2433-4715 |
DOI: | 10.24586/jags.8.2_305 |