異なる高さのスギ樹皮から検出された線虫の分類群組成および分子系統学的位置
線虫は樹皮から分離されており,地下部だけでなく地上部を含めた森林全体の物質循環に寄与している可能性がある.本研究は,地上部における線虫の分布と特異的な分類を解明するため,1 m から10 m までの異なる高さのスギ樹皮に生息する線虫の分類群組成と優占している分類群の分子系統学的位置を調べた.その結果,全ての樹皮から線虫が検出された.全ての樹高で真菌食性線虫が86% 以上と優占した.COI 領域にもとづく分子系統樹から全ての樹高の樹皮に生息するAphelenchoididae 科線虫はブートストラップ値100%で同一Clade に位置した.SSU 領域にもとづく分子系統樹からブートストラップ値9...
Saved in:
Published in | 日本線虫学会誌 Vol. 54; pp. 19 - 27 |
---|---|
Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本線虫学会
2024
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0919-6765 1882-3408 |
DOI | 10.3725/jjn.54.19 |
Cover
Summary: | 線虫は樹皮から分離されており,地下部だけでなく地上部を含めた森林全体の物質循環に寄与している可能性がある.本研究は,地上部における線虫の分布と特異的な分類を解明するため,1 m から10 m までの異なる高さのスギ樹皮に生息する線虫の分類群組成と優占している分類群の分子系統学的位置を調べた.その結果,全ての樹皮から線虫が検出された.全ての樹高で真菌食性線虫が86% 以上と優占した.COI 領域にもとづく分子系統樹から全ての樹高の樹皮に生息するAphelenchoididae 科線虫はブートストラップ値100%で同一Clade に位置した.SSU 領域にもとづく分子系統樹からブートストラップ値92% 以上で3 つのClade に分かれ, 樹皮由来のAphelenchoididae 科線虫はリターや土壌に生息するものとは別Clade に位置した.したがって,線虫は地上高10 mのスギ樹皮まで生息し,Aphelenchoididae 科線虫が優占することが示された.さらに,Aphelenchoididae 科線虫は樹高にかかわらず同一系統が樹皮に分布することが示唆された.したがって,スギ樹皮に付着する蘚苔類が線虫の重要な生息地であることが示唆され,樹皮の分解過程には真菌食性線虫が間接的に関与することが考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0919-6765 1882-3408 |
DOI: | 10.3725/jjn.54.19 |