利用者行動が関連した問題事象の「対策のフレームワーク検討のための汎用モデル」の導出―放射線読影レポートの確認漏れ事象に関連した文献群への適用による提案手法の有用性の検討

近年,放射線読影レポートの確認漏れに伴う患者安全上の問題(以下,「確認漏れの問題」)が全国的に多発しており,多くの病院から対策事例の発表が行われている.それらを体系的に整理できれば有意義な知見が得られて患者安全の改善に寄与する可能性があるが,表現形式が多種多様なために,それらの文献から情報を抽出して整理することは容易ではない.翻って,文献整理の困難さは「確認漏れの問題」に固有ではなく医療情報システム全般に共通している.そこで,本研究では「『施設に依存しない共通的なフロー』を有する業務で『利用者行動』に起因して発生した事象」に問題を一般化した.そして,それらを論じた文献が多数存在することを仮定し...

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Published in医療情報学 Vol. 39; no. 6; pp. 291 - 318
Main Author 津久間, 秀彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本医療情報学会 26.06.2020
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Summary:近年,放射線読影レポートの確認漏れに伴う患者安全上の問題(以下,「確認漏れの問題」)が全国的に多発しており,多くの病院から対策事例の発表が行われている.それらを体系的に整理できれば有意義な知見が得られて患者安全の改善に寄与する可能性があるが,表現形式が多種多様なために,それらの文献から情報を抽出して整理することは容易ではない.翻って,文献整理の困難さは「確認漏れの問題」に固有ではなく医療情報システム全般に共通している.そこで,本研究では「『施設に依存しない共通的なフロー』を有する業務で『利用者行動』に起因して発生した事象」に問題を一般化した.そして,それらを論じた文献が多数存在することを仮定して,それらから「(a)原因事例集」,「(b)対策事例集」,「(c)対策のフレームワーク検討のための汎用モデル」の3つの成果物を導くための一般的な方法を提案した. 次に,提案手法を「確認漏れの問題」に適用して有意義な知見が得られるかを検討することでその有用性を議論した.具体的には,医中誌Web等で抽出した62編(48病院)の文献を提案手法に適用した.その結果,文献の74%が1,000字以内の抄録であったにも関わらず,上記の(a)~(c)の成果物を得ることができた.そのような状況でも提案手法が有効に機能したことには「施設に依存しない業務フロー」と「利用者行動に伴って発生した問題」の2つのキーワードが重要であった.そして,今回の結果から提案手法が同様な問題に柔軟に適用可能であることが示唆された.
ISSN:0289-8055
2188-8469
DOI:10.14948/jami.39.291