男性乳癌における生殖細胞系列病的バリアント探索の試み

男性乳癌の発症には,加齢・肥満・放射線被爆歴などの因子に加え遺伝学的要因も知られているが,BRCA1/2以外について検索されることはまれである.われわれは男性乳癌を対象としたレジストリ研究を行っており,登録症例52例のうち,遺伝子パネルシーケンス解析について同意を取得できた7例を解析対象とした.同意取得後に末梢血液を採取し,不死化B細胞を樹立し,このDNAを用いてBRCA1/2遺伝子を含む遺伝性がん関連パネルシーケンス解析を行った結果,7例中2例で乳癌関連遺伝子に病的バリアントが検出された.このうち1例はシングルサイト遺伝子検査および唾液・毛髪を用いた解析では当該病的バリアントは検出されなかっ...

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Published in遺伝性腫瘍 Vol. 24; no. 2; pp. 128 - 135
Main Authors 石塚, 由美子, 江口, 英孝, 齊藤, 光江, 堀本, 義哉, 岡﨑, 康司, 佐々木, 律子, 新井, 正美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会 25.10.2024
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ISSN2435-6808
DOI10.18976/jsht.24.2_128

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Summary:男性乳癌の発症には,加齢・肥満・放射線被爆歴などの因子に加え遺伝学的要因も知られているが,BRCA1/2以外について検索されることはまれである.われわれは男性乳癌を対象としたレジストリ研究を行っており,登録症例52例のうち,遺伝子パネルシーケンス解析について同意を取得できた7例を解析対象とした.同意取得後に末梢血液を採取し,不死化B細胞を樹立し,このDNAを用いてBRCA1/2遺伝子を含む遺伝性がん関連パネルシーケンス解析を行った結果,7例中2例で乳癌関連遺伝子に病的バリアントが検出された.このうち1例はシングルサイト遺伝子検査および唾液・毛髪を用いた解析では当該病的バリアントは検出されなかった.いずれの患者についても結果開示を行い,臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行った.男性乳癌では遺伝学的背景が存在する可能性を考慮することで,患者およびその血縁者に対する正しい臨床的対応の実践につなげることができるが,その解析方法や解釈は慎重に行う必要があることを念頭に置くべきと考えられた.
ISSN:2435-6808
DOI:10.18976/jsht.24.2_128