非破裂性巨大左バルサルバ洞動脈瘤に対する1手術例

症例は63歳男性.健康診断の胸部X線で縦隔陰影の拡大を指摘され,精査加療目的に当科紹介受診.心エコーで左冠尖基部に連続する巨大嚢胞状腫瘤とその中に流入する血流を認め,左バルサルバ洞動脈瘤の診断となった.また大動脈弁二尖弁,moderate ARも認めた.冠動脈CTで左冠動脈は瘤より起始し,有意狭窄はなかったが,瘤壁に圧排され扁平に変形していた.本症例に対し,左冠尖部分の弁輪組織が脆弱かつ著明に拡大していたため,Bentall手術を施行した.左冠尖部分は僧帽弁前尖に連なる線維組織に糸かけを行い,さらに止血補強にウシ心膜を用いた.左冠動脈は瘤壁に強固に癒着しており,剥離の際に後壁を損傷したため,大...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 50; no. 1; pp. 38 - 43
Main Authors 榊原, 聡, 山内, 孝, 須原, 均, 三上, 翔, 正井, 崇史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.01.2021
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Summary:症例は63歳男性.健康診断の胸部X線で縦隔陰影の拡大を指摘され,精査加療目的に当科紹介受診.心エコーで左冠尖基部に連続する巨大嚢胞状腫瘤とその中に流入する血流を認め,左バルサルバ洞動脈瘤の診断となった.また大動脈弁二尖弁,moderate ARも認めた.冠動脈CTで左冠動脈は瘤より起始し,有意狭窄はなかったが,瘤壁に圧排され扁平に変形していた.本症例に対し,左冠尖部分の弁輪組織が脆弱かつ著明に拡大していたため,Bentall手術を施行した.左冠尖部分は僧帽弁前尖に連なる線維組織に糸かけを行い,さらに止血補強にウシ心膜を用いた.左冠動脈は瘤壁に強固に癒着しており,剥離の際に後壁を損傷したため,大伏在静脈パッチで冠動脈形成術を行った.左バルサルバ洞動脈瘤はきわめて稀な疾患であり,基部置換時の止血補強や冠動脈再建時のpitfallを術前に十分把握し,治療戦略をたてることが重要であると思われた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.50.38