TAPP術後の腹膜縫合部裂隙嵌頓の1例

患者は,77歳の男性.両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair;以下TAPP)を実施したが,術後4日目に腸閉塞を発症.CT画像から右側TAPP修復部位での腹膜外腔への小腸のヘルニア嵌頓が原因と判断し,即日緊急で腹腔鏡下手術を実施した.手術所見では,右側の腹膜閉鎖部の正中側に形成された腹膜の裂隙を通して回腸が約50cm,腹膜前腔から膀胱前腔に嵌頓していた.ヘルニアを鏡視下に整復し,腹膜の裂隙を縫合閉鎖し手術を終えた.腹腔鏡下ヘルニア修復術後は腹膜縫合部への負荷から裂隙を形成し,ヘルニア嵌頓をきたす可能性があるので,...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 4; pp. 938 - 942
Main Authors 佐藤, 裕英, 古屋, 大, 太田, 信次, 山田, 起三子, 瀬戸, 瞬, 五井, 孝憲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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Summary:患者は,77歳の男性.両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair;以下TAPP)を実施したが,術後4日目に腸閉塞を発症.CT画像から右側TAPP修復部位での腹膜外腔への小腸のヘルニア嵌頓が原因と判断し,即日緊急で腹腔鏡下手術を実施した.手術所見では,右側の腹膜閉鎖部の正中側に形成された腹膜の裂隙を通して回腸が約50cm,腹膜前腔から膀胱前腔に嵌頓していた.ヘルニアを鏡視下に整復し,腹膜の裂隙を縫合閉鎖し手術を終えた.腹腔鏡下ヘルニア修復術後は腹膜縫合部への負荷から裂隙を形成し,ヘルニア嵌頓をきたす可能性があるので,腹膜閉鎖の際には隙間なく強度をもたせた閉鎖を心掛けるとともに,術後はこの疾患を念頭に入れておくことが必要と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.938