プリン代謝の新たな役割:ヒトAMPD2欠損症の発見とそのマウスモデル
プリン代謝とくにアデニンヌクレオチド代謝は細胞内におけるATPの維持に重要な役割を果たしている.AMPデアミナーゼ(AMPD)は細胞内AMPを減少させることによりATPレベルを維持していると考えられている.ヒトなどではAMPDには3つのアイソフォーム, (AMPD1, AMPD2, AMPD3)が存在し,このうちAMPD1とAMPD3についてはヒトにおける酵素異常症の存在が知られており,AMPD1 筋AMPD欠損症(AMPD1変異)はミオパシーの原因として,赤血球AMPD欠損症(AMPD3変異)では細胞内ATPの増加を生じると報告されている.一方,AMPD2の変異(AMPD2欠損症)はヒトでは...
Saved in:
Published in | 痛風と核酸代謝 Vol. 38; no. 2; pp. 101 - 108 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
2014
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1344-9796 2186-6368 |
DOI | 10.6032/gnam.38.101 |
Cover
Summary: | プリン代謝とくにアデニンヌクレオチド代謝は細胞内におけるATPの維持に重要な役割を果たしている.AMPデアミナーゼ(AMPD)は細胞内AMPを減少させることによりATPレベルを維持していると考えられている.ヒトなどではAMPDには3つのアイソフォーム, (AMPD1, AMPD2, AMPD3)が存在し,このうちAMPD1とAMPD3についてはヒトにおける酵素異常症の存在が知られており,AMPD1 筋AMPD欠損症(AMPD1変異)はミオパシーの原因として,赤血球AMPD欠損症(AMPD3変異)では細胞内ATPの増加を生じると報告されている.一方,AMPD2の変異(AMPD2欠損症)はヒトでは報告されていなかったが,最近,AMPD2のホモ欠損はヒトにおいて橋小脳低形成を引き起こすことが明らかになった.マウスモデルでは,AMPD2単独欠損では神経系の変化はないが,AMPD2/AMPD3複合欠損マウスは出生後3週までに行動異常を示してすべて死亡し,海馬・小脳などの神経細胞の変性を認めた.またAMPD2/AMPD3複合欠損マウス脳組織では,細胞内ATPの増加とGTPの減少を認めた.酵母のAMPD変異株はアデニン添加の特殊条件でその増殖が阻害されるが,この変異株はヒトAMPD2発現により増殖能は改善する.AMPD2欠損患者由来線維芽細胞でも,アデノシン添加により生存率が低下した.また,この条件で細胞内ATPの増加とGTPの減少を認め,同時にタンパク質合成能の低下が示された.AMPD2欠損患者由来神経細胞でのアデノシン添加培養後の細胞生存率の低下はAICAR(AICAribonucleotide)の添加により改善し,細胞内GTPの増加とタンパク質合成能の改善が示唆された.以上より,アデニンヌクレオチド代謝の重要酵素のひとつであるAMPDは,細胞内ATPレベルの維持のみならず,アデニンヌクレオチドからグアニンヌクレオチドへの変換を通して細胞内GTPの維持とそれによるタンパク質合成調節にも重要な役割を果たしていることが示された. |
---|---|
ISSN: | 1344-9796 2186-6368 |
DOI: | 10.6032/gnam.38.101 |