心房細動例における新規抗凝固薬「ダビガトラン」の安全性と有効性に関する検討 3年間の使用経験より

背景 : 心房細動 (AF) 例の抗凝固療法として新規抗凝固薬が普及したが, 特に高齢者において重篤な出血性合併も散見される. 今回われわれは, トロンビン直接阻害薬ダビガトランの約3年の使用経験からその有効性・安全性を検証した.  対象と方法 : 対象は, ダビガトランが投与されたAF例150例 (平均年齢68歳, 男性115例, 女性35例). これらにおいて心血管イベント, 出血性合併症等副作用の発生状況と活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の関係などを検討した.  結果 : ダビガトランの投与量は, 220mg/日が91例 (61%), 300mg/日が59例 (39%)...

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Published in心臓 Vol. 47; no. 5; pp. 563 - 569
Main Authors 戸叶, 隆司, 中里, 祐二, 加藤, 悦郎, 遠藤, 裕久, 小田切, 史徳, 山瀬, 美紀, 柳沼, 憲志, 横山, 健, 大井川, 哲也, 加藤, 洋一, 諏訪, 哲, 代田, 浩之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.05.2015
日本心臓財団・日本循環器学会
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Summary:背景 : 心房細動 (AF) 例の抗凝固療法として新規抗凝固薬が普及したが, 特に高齢者において重篤な出血性合併も散見される. 今回われわれは, トロンビン直接阻害薬ダビガトランの約3年の使用経験からその有効性・安全性を検証した.  対象と方法 : 対象は, ダビガトランが投与されたAF例150例 (平均年齢68歳, 男性115例, 女性35例). これらにおいて心血管イベント, 出血性合併症等副作用の発生状況と活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の関係などを検討した.  結果 : ダビガトランの投与量は, 220mg/日が91例 (61%), 300mg/日が59例 (39%) であった. 経過観察期間中, 血栓・塞栓症, 頭蓋内出血の発生は認められなかったが, 消化管出血を10例 (7%) に合併した. 消化器症状は26例 (17%) に認められ, これらのうち12例 (8%) が投与中止に至った. APTTは年齢, 血清クレアチニン (S-Cr) と正相関, クレアチニンクリアランス, 糸球体濾過量 (e-GFR) とは負の相関を示し, 消化管出血の多くは高齢者, 抗血小板薬2剤併用例でAPTTが60秒以上に延長した例であった.  結語 : ダビガトランの3年にわたる使用経験において, 生命予後に影響するような出血性合併症を起こすことなく血栓・塞栓症を予防できた. APTTは, 消化管出血などの大出血の予測に参考にできると考えられ, 特に高齢者や腎機能低下例, 抗血小板薬併用例などでは定期的に検査するべきと思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.563