完全内視鏡下に剝離摘出した大動脈弁乳頭状線維弾性腫の1例
症例は59歳男性.健診で糖尿病を指摘され当院糖尿病内科に教育入院した際に行われたスクリーニング目的の経胸壁心エコー検査で大動脈弁尖に付着する腫瘤影を指摘された.経食道心エコー検査(TEE)では,左冠尖腹側に付着する,軟性,5×7 mm大の可動性のある腫瘤を認めた.他心腔内に腫瘤形成は認めず,大動脈弁逆流も伴っていなかった.形態的に血栓または乳頭状線維弾性腫が疑われた.全身精査では明らかな梗塞所見を認めなかった.可動性のある心内腫瘤のため診断的目的も含めて手術適応と判断し,弁への浸潤度次第で機械弁置換術も考慮した上で腫瘤切除術を計画した.手術は右第3肋間アプローチ(6 cm皮切)にて完全内視鏡下...
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Published in | 心臓 Vol. 56; no. 8; pp. 835 - 840 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.08.2024
日本心臓財団・日本循環器学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.56.835 |
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Summary: | 症例は59歳男性.健診で糖尿病を指摘され当院糖尿病内科に教育入院した際に行われたスクリーニング目的の経胸壁心エコー検査で大動脈弁尖に付着する腫瘤影を指摘された.経食道心エコー検査(TEE)では,左冠尖腹側に付着する,軟性,5×7 mm大の可動性のある腫瘤を認めた.他心腔内に腫瘤形成は認めず,大動脈弁逆流も伴っていなかった.形態的に血栓または乳頭状線維弾性腫が疑われた.全身精査では明らかな梗塞所見を認めなかった.可動性のある心内腫瘤のため診断的目的も含めて手術適応と判断し,弁への浸潤度次第で機械弁置換術も考慮した上で腫瘤切除術を計画した.手術は右第3肋間アプローチ(6 cm皮切)にて完全内視鏡下で施行した.腫瘤は左冠尖腹側に,疎に線維性付着しており,牽引すると容易に剝離摘出できた.肉眼的には弁尖自体への浸潤はないものと判断し,他に弁尖異常のないことを確認して大動脈を閉鎖した.心拍再開後のTEEで弁機能不全のないことを確認し手術を終了した.腫瘍は肉眼的にイソギンチャク様の形態を呈しており,病理組織検査で乳頭状線維弾性腫と確定診断した.術後経過は良好で術後9病日に独歩退院し,約8カ月が経過した現在,再発を認めていない.乳頭状線維弾性腫に対しては腫瘤摘出,あるいは弁切除などの手術報告があるが,我々は完全内視鏡下に剝離摘出が可能であった乳頭状線維弾性腫の1例を経験したので報告する. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.56.835 |