重度直腸脱に対するlaparoscopic ventral mesh rectopexy に片側の後側方剥離および直腸間膜の岬角固定を追加した1例

症例は89 歳女性。肛門部痛を主訴に当院外科を受診し、直腸脱の診断で便通コントロールと軟膏で経過をみるも徐々に増悪した。初診から9 年後、当院での手術を希望されたため外科より当科紹介受診となった。砕石位、安静時で+16cm の完全直腸脱を認め、腟からの臓器脱の合併はなかった。重積先進部は高位にあると判断し、当科で従来行ってきたLaparoscopic ventral mesh rectopexy(LVR)に右側からの可及的な直腸授動と直腸間膜の岬角固定を併用する方針とした。手術は岬角より切開を開始し、直腸右側の腹膜を切開しながら、直腸後腔を尾側まで広く展開し、側方靱帯は温存した。その後の直腸腟...

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Published in日本女性骨盤底医学会誌 Vol. 19; no. 1; pp. 8 - 12
Main Authors 田畑, 龍治, 片倉, 雅文, 田中, 玲香, 大村, 健二, 森山, 真吾, 藤森, 大志, 佐藤, 聡, 篠原, 正尚, 小川, 一栄, 田中, 佑宜, 川島, 洋平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本女性骨盤底医学会 31.01.2023
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ISSN2187-5669
2434-8996
DOI10.32310/jfpfm.19.1_8

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Summary:症例は89 歳女性。肛門部痛を主訴に当院外科を受診し、直腸脱の診断で便通コントロールと軟膏で経過をみるも徐々に増悪した。初診から9 年後、当院での手術を希望されたため外科より当科紹介受診となった。砕石位、安静時で+16cm の完全直腸脱を認め、腟からの臓器脱の合併はなかった。重積先進部は高位にあると判断し、当科で従来行ってきたLaparoscopic ventral mesh rectopexy(LVR)に右側からの可及的な直腸授動と直腸間膜の岬角固定を併用する方針とした。手術は岬角より切開を開始し、直腸右側の腹膜を切開しながら、直腸後腔を尾側まで広く展開し、側方靱帯は温存した。その後の直腸腟間の剥離およびメッシュ固定は型通りのLVR を行った。 続いて岬角の高さで直腸が緩く直線化するまで右側の直腸間膜を牽引し、非吸収糸で直腸間膜をL5S1 前縦靱帯に縫合固定し、メッシュを後腹膜化した。手術時間156 分、出血量20ml。術後便秘を含め合併症なく経過し、術後13 日目に軽快退院した。術後5 カ月の時点で明らかな再発は認めない。重度直腸脱では、高い位置で直腸固定することが求められる。直腸の後方・右方剥離および直腸間膜の岬角固定は、LVR に追加する手技として比較的容易であり、有用と思われた。
ISSN:2187-5669
2434-8996
DOI:10.32310/jfpfm.19.1_8