市中発症の非重症胆道感染症に対する推奨抗菌薬設定の効果

胆道感染症は重篤化した場合,敗血症や臓器不全で死亡に至ることもある.相模原病院では,市中発症の非重症胆道感染症の初期治療薬に広域抗菌薬のタゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)の使用が多く,抗菌薬適正使用支援チームと消化器内科で協議し,重症度別の推奨抗菌薬設定とクリニカルパス(CP)の作成をした.本研究は,2020年9月から2023年8月までに市中発症の非重症胆道感染症で入院した患者を対象に,CP作成前後の初期抗菌薬の使用状況を比較した.また,重症度別にCPの適用群と非適用群の患者背景と治療状況を比較した.対象患者は軽症68名と中等症46名の合計114名であった.軽症は,セフメタゾールが...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 39; no. 1; pp. 20 - 28
Main Authors 丸山, 浩平, 足立, 遼子, 関谷, 潔史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.01.2024
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Summary:胆道感染症は重篤化した場合,敗血症や臓器不全で死亡に至ることもある.相模原病院では,市中発症の非重症胆道感染症の初期治療薬に広域抗菌薬のタゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC)の使用が多く,抗菌薬適正使用支援チームと消化器内科で協議し,重症度別の推奨抗菌薬設定とクリニカルパス(CP)の作成をした.本研究は,2020年9月から2023年8月までに市中発症の非重症胆道感染症で入院した患者を対象に,CP作成前後の初期抗菌薬の使用状況を比較した.また,重症度別にCPの適用群と非適用群の患者背景と治療状況を比較した.対象患者は軽症68名と中等症46名の合計114名であった.軽症は,セフメタゾールが作成前に1名(3.8%),作成後に17名(40.5%)と有意に使用割合が増加した(p<0.001).中等症は,スルバクタム/セフォペラゾンが作成前に12名(54.5%),作成後に19名(79.2%)と使用割合に有意な差はなかったが,増加した(p=0.12).軽症と中等症は,作成後にTAZ/PIPCの使用割合が有意に減少した(p<0.05).CP適用の有無にかかわらず,入院後30日以内死亡と抗菌薬終了後30日以内再発は認めなかった.本結果より,非重症胆道感染症の重症度別推奨抗菌薬設定は,推奨抗菌薬の使用が増加し,TAZ/PIPCなどの広域抗菌薬の温存につながる可能性が示唆された.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.39.20