抗悪性腫瘍薬Paclitaxelの毒性研究(第1報) : ラットにおける単回静脈内投与毒性試験
抗悪性腫瘍薬paclitaxelの安全性評価の一環として, 本薬を雌雄Crj: CD (SD)ラットに38, 50, 65及び85 mg/kgの用量で単回静脈内投与し, その急性毒性を検索した。1. 一般状態については, 溶媒及び全paclitaxel群で頻呼吸及び腹臥位を伴った自発運動の抑制, 全paclitaxel投与群で脱毛が観察された。2. 85 mg/kg群の雄5例中1例, 雌5例中2例の死亡が認められた。このうち雌1例は投与直後に溶媒投与に基づく呼吸不全により死亡した。投与6日目に死亡した雌1例と12日目に死亡した雄1例については, 骨髄の低形成及びリンパ系器官のリンパ球減少がみら...
Saved in:
Published in | The Journal of Toxicological Sciences Vol. 19; no. SupplementI; pp. 1 - 9 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 日本毒性学会
1994
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0388-1350 1880-3989 |
DOI | 10.2131/jts.19.SupplementI_1 |
Cover
Summary: | 抗悪性腫瘍薬paclitaxelの安全性評価の一環として, 本薬を雌雄Crj: CD (SD)ラットに38, 50, 65及び85 mg/kgの用量で単回静脈内投与し, その急性毒性を検索した。1. 一般状態については, 溶媒及び全paclitaxel群で頻呼吸及び腹臥位を伴った自発運動の抑制, 全paclitaxel投与群で脱毛が観察された。2. 85 mg/kg群の雄5例中1例, 雌5例中2例の死亡が認められた。このうち雌1例は投与直後に溶媒投与に基づく呼吸不全により死亡した。投与6日目に死亡した雌1例と12日目に死亡した雄1例については, 骨髄の低形成及びリンパ系器官のリンパ球減少がみられたため, paclitaxel投与に基づく全身性の毒性が死亡原因と考えられた。3. 血液学的検査では, 全paclitaxe1群で投与4, 5日目に網赤血球数, 白血球数, 好中球百分率の減少がみられた。これらの変化はおおむね投与1週間後に回復した。4. 病理組織学的検査では, 85 mg/kg群で胸腺髄質の萎縮, 骨髄の低形成, 脾臓のリンパ球減少がみられ, 全paclitaxel群で精巣の精子形成抑制, 精細管萎縮が認められた。Paclitaxelのラットにおける単回静脈内投与により, 主として造血系, リンパ系及び雄生殖器の器官・組織に対する毒性作用が認められ, 致死量は85 mg/kgであった。 |
---|---|
ISSN: | 0388-1350 1880-3989 |
DOI: | 10.2131/jts.19.SupplementI_1 |