頸部に発生した異所性胸腺腫症例

まれな頸部に発生した異所性胸腺腫の 1 例を経験したので報告する。症例は 53 歳、女性。人間ドックで前頸部腫瘤を指摘され当科紹介受診となった。頸部エコー、頸部 CT、MRI で甲状腺左葉の尾側に位置する 40 × 30 × 50 mm 大の腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診ではリンパ球を認め、悪性リンパ腫もしくは Castleman 病を疑った。反回神経麻痺リスクを回避したいという希望が強く、まず全身麻酔下に腫瘤開放生検術(楔状切除)を施行した。術後の病理検査結果で胸腺腫との診断を得たため、改めて腫瘤摘出術を施行した。胸腺腫は周囲臓器への浸潤性発育や播種、遠隔転移を示すことがあるため、頸部異所性胸...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 69; no. 1; pp. 53 - 61
Main Authors 田中, 成幸, 山内, 盛泰, 倉富, 勇一郎, 宮崎, 純二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 20.01.2023
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.69.1_53

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Summary:まれな頸部に発生した異所性胸腺腫の 1 例を経験したので報告する。症例は 53 歳、女性。人間ドックで前頸部腫瘤を指摘され当科紹介受診となった。頸部エコー、頸部 CT、MRI で甲状腺左葉の尾側に位置する 40 × 30 × 50 mm 大の腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診ではリンパ球を認め、悪性リンパ腫もしくは Castleman 病を疑った。反回神経麻痺リスクを回避したいという希望が強く、まず全身麻酔下に腫瘤開放生検術(楔状切除)を施行した。術後の病理検査結果で胸腺腫との診断を得たため、改めて腫瘤摘出術を施行した。胸腺腫は周囲臓器への浸潤性発育や播種、遠隔転移を示すことがあるため、頸部異所性胸腺腫も潜在的には悪性腫瘍ととらえておくべきである。治療としては縦隔胸腺腫同様、完全切除が望ましい。頸部異所性胸腺腫の術前診断は困難なため、頸部に胸腺腫が発生し得ることを念頭に置くべきである。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.69.1_53