小学校知的障害学級に在籍する児童の交流学級における音楽の指導のあり方に関する一考察 児童の学習過程の分析から

本研究は,特別支援学級に在籍する特別な支援を必要とする児童が,交流学級の音楽科の授業において,指導内容をどのように学んでいったか,個の学びに注目し学習が成立する過程を明らかにすることを目的とした.知的障害特別支援学級に在籍する小学校3年男児を対象とし,わらべうたを教材として,指導内容「はねるリズム」を扱った.方法は,ビデオの逐語記録より,対象児の言動の中で「はねるリズム」を把握しようとする姿が顕著に現れている場面を抽出し,指導内容をどのように捉えていったかを分析した.分析結果から,対象児は,自身の生活の中で涵養されてきたわらべ歌遊びの経験を支えとし,音楽の授業で何度も歌って遊ぶなかで,身体を媒...

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Published in人間生活文化研究 Vol. 2020; no. 30; pp. 28 - 39
Main Author 大久保, 圭子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 大妻女子大学人間生活文化研究所 01.01.2020
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ISSN2187-1930
DOI10.9748/hcs.2020.28

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Summary:本研究は,特別支援学級に在籍する特別な支援を必要とする児童が,交流学級の音楽科の授業において,指導内容をどのように学んでいったか,個の学びに注目し学習が成立する過程を明らかにすることを目的とした.知的障害特別支援学級に在籍する小学校3年男児を対象とし,わらべうたを教材として,指導内容「はねるリズム」を扱った.方法は,ビデオの逐語記録より,対象児の言動の中で「はねるリズム」を把握しようとする姿が顕著に現れている場面を抽出し,指導内容をどのように捉えていったかを分析した.分析結果から,対象児は,自身の生活の中で涵養されてきたわらべ歌遊びの経験を支えとし,音楽の授業で何度も歌って遊ぶなかで,身体を媒介として「はねるリズム」について様々な表現を試行錯誤し,リズムのニュアンスや質感を体感し指導内容を学んでいったことが明らかとなった. 結果より,知的な発達の遅れがあり言語活動等に課題のある子どもが交流学級(音楽)において指導内容の学びを成立させるための手だてとして,①生活文化や生活経験に根ざした教材の提供,②言語による認識を補完する手段としての身体活動の導入,③指導内容の焦点化が有効であることが示唆された.また,特別な支援が必要な子どもが交流学級で学ぶとき,個々の子どもの認知発達や指導内容を学ぶプロセスに着目し,それらに応じた手だてを講じていくことが重要であると考えられる.
ISSN:2187-1930
DOI:10.9748/hcs.2020.28