原発巣切除9年4カ月後に腸閉塞で発症した大腸癌肝転移の1例

56歳,男性.嘔吐を主訴とし腹部単純写で腸閉塞と診断された.既往歴で12年前に横行結腸癌, 9年前に上行結腸癌手術がある.画像診断でS4-S5の肝腫瘍の回腸への浸潤による腸閉塞と診断した.開腹所見で腫瘍は小腸に加え十二指腸球部にも浸潤していた. S4aとS5と胆嚢など浸潤臓器とともに一塊として摘出した. 12Cリンパ節に転移を認めたため系統的肝門部リンパ郭清を行った.病理組織検査で既往の上行結腸癌と同様の組織構造を呈する中分化型腺癌で大腸癌肝転移と診断した.組織学的にも小腸・胆嚢・十二指腸球部への浸潤が確認された.切除断端は陰性であった.大腸癌肝転移はほとんどが5年以内に発症するため, 9年4...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 63; no. 2; pp. 426 - 429
Main Authors 井上, 章, 鷲田, 昌信, 金子, 猛, 西平, 友彦, 岩井, 輝, 石井, 隆道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.02.2002
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.63.426

Cover

More Information
Summary:56歳,男性.嘔吐を主訴とし腹部単純写で腸閉塞と診断された.既往歴で12年前に横行結腸癌, 9年前に上行結腸癌手術がある.画像診断でS4-S5の肝腫瘍の回腸への浸潤による腸閉塞と診断した.開腹所見で腫瘍は小腸に加え十二指腸球部にも浸潤していた. S4aとS5と胆嚢など浸潤臓器とともに一塊として摘出した. 12Cリンパ節に転移を認めたため系統的肝門部リンパ郭清を行った.病理組織検査で既往の上行結腸癌と同様の組織構造を呈する中分化型腺癌で大腸癌肝転移と診断した.組織学的にも小腸・胆嚢・十二指腸球部への浸潤が確認された.切除断端は陰性であった.大腸癌肝転移はほとんどが5年以内に発症するため, 9年4カ月後の発症は稀である.肝転移の小腸浸潤の報告はみられず,本例では既往手術による肝臓側面への癒着が小腸浸潤の原因と推察された.術後25カ月現在再発を認めず,浸潤臓器合併切除を伴う肝切除術は有用と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.63.426