在留外国人の健康維持に必要な災害時の支援

「抄録」近年, 全国各地で自然災害が起こっているが, 在留外国人はコミュニケーション・ギャップなどにより, 災害弱者になりやすいとされている. しかし, 彼らが災害時に居住する地域で心身の健康を維持するために必要な支援について, 明らかになっていない. そこで, 本研究は, 災害時に在留外国人にどのような支援が必要かを明らかにすることを目指す. まず, 岡山県内の在留外国人(国籍別にベトナム27名, インドネシア12名, 中国11名, その他34名)を対象に質問紙調査を行った. さらに, 質問紙回答者の内3名に対し, 半構造化面接による調査を行った. その結果, 災害時の物資について, 在留外...

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Published inKAWASAKI IGAKKAI SHI LIBERAL ARTS & SCIENCES no. 45; pp. 97 - 108
Main Authors 青木健太郎, 橋本美香, 長谷川真紀, 中野貴司, 田中孝明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2019
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ISSN0386-5398
DOI10.11482/kmj-las201945097

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Summary:「抄録」近年, 全国各地で自然災害が起こっているが, 在留外国人はコミュニケーション・ギャップなどにより, 災害弱者になりやすいとされている. しかし, 彼らが災害時に居住する地域で心身の健康を維持するために必要な支援について, 明らかになっていない. そこで, 本研究は, 災害時に在留外国人にどのような支援が必要かを明らかにすることを目指す. まず, 岡山県内の在留外国人(国籍別にベトナム27名, インドネシア12名, 中国11名, その他34名)を対象に質問紙調査を行った. さらに, 質問紙回答者の内3名に対し, 半構造化面接による調査を行った. その結果, 災害時の物資について, 在留外国人特有の要望は認められなかった. しかし, 医療サービスへのアクセスに不安を持ち, 多言語対応の医療情報などを強く求めていることが明らかになった. また, 相談できる病院がないという回答は57.1%にのぼり, 災害時の医療支援については70.2%が, 災害マニュアルの存在については83.3%が認識していなかった. これらの調査の結果から, 医学生が理解しなければならないことが明らかになった. まず, 在留外国人には, 災害時の支援の情報収集に課題があることである. 国際社会における医療の現状と課題の理解は, 『医学教育モデル・コア・カリキュラム』の「国際社会への貢献」の項目に示されているものである. 次に, 災害時に医療サービスを円滑に提供するために, 平時から外国人医療について理解しなければならないことである. そのためには, 患者の文化的背景を尊重し, 異なる言語や価値観に対応した医療を提供するための素養を身に付けることが必要となる. これらを実践するためには, 医学部のカリキュラムとして, 大学全体で地域の在留外国人の診療や災害時の支援に関する学修を行う必要があると考える.
ISSN:0386-5398
DOI:10.11482/kmj-las201945097