脳転移をきたし急激な経過を辿ったlymphangiosis typeびまん浸潤型大腸癌の1例
びまん浸潤型大腸癌の術前診断にて手術を施行したが,術後約1カ月で脳転移をきたし,急激な経過を辿った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は47歳,男性.下痢にて発症.他院では潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患が疑われていたが,生検にて腺癌が証明され,転移性大腸癌の疑診のもと精査・加療目的で当センター紹介となった.注腸検査では, S状結腸~直腸(Rb)にかけて腸管の壁不整と伸展不良を認め,大腸内視鏡検査では,肛門縁から約25cm口側まで全周性の粗造粘膜を認めたが明らかな狭窄や潰瘍性病変は認めなかった.全身検索を行ったが,大腸に転移を起こす原発巣は認めず, lymphangios...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 3; pp. 733 - 738 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
25.03.1998
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Subjects | |
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Summary: | びまん浸潤型大腸癌の術前診断にて手術を施行したが,術後約1カ月で脳転移をきたし,急激な経過を辿った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は47歳,男性.下痢にて発症.他院では潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患が疑われていたが,生検にて腺癌が証明され,転移性大腸癌の疑診のもと精査・加療目的で当センター紹介となった.注腸検査では, S状結腸~直腸(Rb)にかけて腸管の壁不整と伸展不良を認め,大腸内視鏡検査では,肛門縁から約25cm口側まで全周性の粗造粘膜を認めたが明らかな狭窄や潰瘍性病変は認めなかった.全身検索を行ったが,大腸に転移を起こす原発巣は認めず, lymphangiosis type原発性びまん浸潤型大腸癌の診断にて手術を施行した.手術所見はP0H0N4SE M (-)で,腹会陰式直腸切断術を施行した.傍大動脈リンパ節腫大が著明で,絶対的非治癒切除となった.術後3週間後より,化学療法を施行したが,術後5週目に脳転移から来る意識障害を引き起こし,術後2カ月で死亡するという急激な経過を辿った. 原発性びまん浸潤型大腸癌のlymphangiosis typeは,壁硬化,狭窄をきたさないことより,炎症性腸疾患などとの鑑別診断が困難である.また,早期発見の遅れなどが原因で,予後不良な疾患である.本疾患の存在・特徴を念頭においた診断診療が重要であると考えられた. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.59.733 |