非財務的尺度と財務的尺度の総合―総合的マネジメントと管理会計

近年,市場競争に勝つための留意点の一つは,知的資産を高めたり,それの効果的管理であるといわれている.知的資産は企業の生み出した技能,関係,知識,情報等の無形資産の集合であり,その大部分は財務諸表に明示されない「見えざる資産」である.知的資産は大きく分けて,顧客資産,構造的資産,人的資産から成り,有形資産以上に収益力の増大に有用である場合が多いと指摘されている.知的資産は多種多様であるので,それを高めるには,単一の財務的尺度で評価するよりも,多様な尺度で総合評価する方が有利である.もう一つの留意点は,トップダウン型経営とエンパワーメント型経営を使い分けたり,融合することである.というのは,前者は...

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Published in管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 Vol. 8; no. 1-2; pp. 33 - 50
Main Author 浜田, 和樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本管理会計学会 31.03.2000
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ISSN0918-7863
2434-0529
DOI10.24747/jma.8.1-2_33

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Summary:近年,市場競争に勝つための留意点の一つは,知的資産を高めたり,それの効果的管理であるといわれている.知的資産は企業の生み出した技能,関係,知識,情報等の無形資産の集合であり,その大部分は財務諸表に明示されない「見えざる資産」である.知的資産は大きく分けて,顧客資産,構造的資産,人的資産から成り,有形資産以上に収益力の増大に有用である場合が多いと指摘されている.知的資産は多種多様であるので,それを高めるには,単一の財務的尺度で評価するよりも,多様な尺度で総合評価する方が有利である.もう一つの留意点は,トップダウン型経営とエンパワーメント型経営を使い分けたり,融合することである.というのは,前者は市場の拡大・縮小や技術革新等の企業環境の構造的変化に対処するために適切であり,後者は顧客ニーズに敏感に反応するための「即応性」や「柔軟性」を持たせるために有利であるからであるからである.近年,エンパワーメント型経営のためには非財務的尺度が有用であると,特に主張されているが,どちらの場合も非財務的尺度と財務的尺度の両者による総合的マネジメントが必要である.これらの点を考慮した総合的マネジメントの具体的進め方として,バランスト・スコアカードの手法があるが,本稿ではそれに類似した,いやむしろそれを進めた日本発の「TP(total productivity)マネジメント」について考察した.TPマネジメントは企業全体のベクトルを合わせ,マトリックス思考により,各種の目標や施策を理論的・体系的に考察するのに適した手法であり,また決定や実施の仕方を工夫することによって,全体目標と関連づけたエンパワーメント型経営にも役立つ手法でもある.そして,この手法を予算管理と組み合わせて用いることにより,予算のみの管理による問題点が克服されることを指摘した.
ISSN:0918-7863
2434-0529
DOI:10.24747/jma.8.1-2_33