口蓋の高さが半固形物の摂食パターンにおよぼす影響 嚥下アプローチへの新たな提言

【目的】半固形物は一般に,舌を口蓋に押し付けることによる押しつぶしで処理される.しかし,健常者において,固形物のように咀嚼して食べる人が存在する.本研究では,口蓋の高さが半固形物の咀嚼パターンに影響している可能性を検討した.【対象】健常若年成人女性50 名.【方法】① 上顎の歯型模型を作製し,咬合平面から口蓋の底部までの高さを5 mm 間隔で計測した.② 最大舌圧を3 回測定し,平均値を分析の対象とした.③ ゼリー5 g 程度の自由嚥下を観察と問診で,咀嚼と押しつぶしパターンに分類した.④ 咀嚼パターンの9 名に対し,ソフトワックスによる模擬PAP(Palatal Augumentation...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 17; no. 1; pp. 25 - 35
Main Authors 小島, 千枝子, 大野, 友久, 長谷川, 賢一, 藤田, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 30.04.2013
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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Summary:【目的】半固形物は一般に,舌を口蓋に押し付けることによる押しつぶしで処理される.しかし,健常者において,固形物のように咀嚼して食べる人が存在する.本研究では,口蓋の高さが半固形物の咀嚼パターンに影響している可能性を検討した.【対象】健常若年成人女性50 名.【方法】① 上顎の歯型模型を作製し,咬合平面から口蓋の底部までの高さを5 mm 間隔で計測した.② 最大舌圧を3 回測定し,平均値を分析の対象とした.③ ゼリー5 g 程度の自由嚥下を観察と問診で,咀嚼と押しつぶしパターンに分類した.④ 咀嚼パターンの9 名に対し,ソフトワックスによる模擬PAP(Palatal Augumentation Prosthesis)を口蓋の最も高い部分に貼り付け,摂食パターンの変化を観察し,舌圧を測定した.⑤ 3 名に対しVF を行い,模擬PAP 有無での嚥下動態を比較した.【結果と考察】統計分析により,押しつぶしと咀嚼に分ける口蓋の高さのカットオフ値が20 mm と算出された.口蓋の高い人は咀嚼が有意に多く,舌圧は有意に低かった.口蓋の高い9 名に模擬PAPを装着すると,咀嚼パターンから押しつぶしパターンに変わり,舌圧は平均5 kPa 上昇した.嚥下開始時の食塊の先端の位置は,咀嚼パターンでは喉頭蓋谷以降が83% を占めたが,押しつぶしパターンに変わると,口腔・咽頭上部領域が100% になり,喉頭蓋谷持続時間も短縮した.口蓋の高い人が半固形物を咀嚼する理由については,食塊を破砕しやすいことに加え,送り込みに関しても,半ば自動的に咽頭へ送り込まれる Stage Ⅱ Transport を用いたほうが容易であることによると推測された.嚥下障害者においても,口蓋の高い人はもともと半固形物を咀嚼していた可能性がある.スクリーニング段階で,口蓋の高さと咀嚼パターンを観察項目に加えることを提案したい.口蓋の高い人には,PAP 装着を選択することが有効と考えられた.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.17.1_25