舌接触補助床装着が咽頭期嚥下に及ぼす影響 健常者における検討
器質的摂食・嚥下障害患者に対する舌接触補助床(PAP)の適応は,約50 年前から顎顔面補綴分野を中心に広まってきた.しかし,機能的摂食・嚥下障害患者に対するPAP の装着については,適応症例の提示に至るほどの十分な報告はなく,本装置が一般に普及しているとはいいがたい.われわれは,舌の後方運動や食塊を咽頭へ駆出する力が低下した摂食・嚥下障害患者に対して,舌尖を硬口蓋に強く押しつけて嚥下させ,食塊の移送や舌の後方運動の亢進を図るアンカー機能を強調した嚥下訓練を指導している.しかし,患者はこの嚥下方法の修得に難渋することも多く,代用訓練方法を模索してきた.今回,われわれは健常者5 名にPAPを模した...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 14; no. 3; pp. 244 - 250 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
31.12.2010
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1343-8441 2434-2254 |
DOI | 10.32136/jsdr.14.3_244 |
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Summary: | 器質的摂食・嚥下障害患者に対する舌接触補助床(PAP)の適応は,約50 年前から顎顔面補綴分野を中心に広まってきた.しかし,機能的摂食・嚥下障害患者に対するPAP の装着については,適応症例の提示に至るほどの十分な報告はなく,本装置が一般に普及しているとはいいがたい.われわれは,舌の後方運動や食塊を咽頭へ駆出する力が低下した摂食・嚥下障害患者に対して,舌尖を硬口蓋に強く押しつけて嚥下させ,食塊の移送や舌の後方運動の亢進を図るアンカー機能を強調した嚥下訓練を指導している.しかし,患者はこの嚥下方法の修得に難渋することも多く,代用訓練方法を模索してきた.今回,われわれは健常者5 名にPAPを模した口蓋の前方部を肥厚させた実験用口蓋床を装着し,咽頭期嚥下に及ぼす効果を嚥下造影検査および嚥下圧検査(Manofluorography)により定量的に評価し,上記の代用嚥下訓練方法としての可能性を検討することとした.その結果,PAP 装着により舌根部嚥下圧は有意に上昇し,食塊の舌根部通過速度は上昇する傾向を認め,アンカー機能を強調した嚥下方法と同様の効果を認めた.以上より,舌の器質的変化を伴わない舌根の後方運動の低下により食塊の咽頭への駆出力が低下している症例にも,口蓋前方部に豊隆を付与した口蓋床の装着により,嚥下機能の改善が期待できる可能性が示唆された. |
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ISSN: | 1343-8441 2434-2254 |
DOI: | 10.32136/jsdr.14.3_244 |