生態心理学的アプローチからみた技能継承の技術化スキーム

これまで技能は,それ自身が個人の内に閉じた特別な行為との理解が主流であったため,技能それ自身を抽出できて,機械やコンピュータに閉じ込めようとする技能の技術化研究が進められてきた.しかし,精緻に熟練者の技能を観察すると,環境との遭遇以前に何かが決まっているというよりはむしろ,環境との絶え間ない相互作用の結果として創発してきたと解釈すべき事実が多く,まさに生態心理学的な行為理解の視点が示唆に富む.主体と環境との関係の中で結果として組織化された行為という“技能"の理解は,物理環境を他者環境と読み替えることで,師匠-弟子関係のような徒弟制度的な“技能継承"プロセスの説明にも拡張可能...

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Published in生態心理学研究 Vol. 1; no. 1; pp. 11 - 18
Main Authors 川上, 浩司, 塩瀬, 隆之, 植木, 哲夫, 片井, 修
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生態心理学会 14.02.2004
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ISSN1349-0443
2434-012X
DOI10.24807/jep.1.1_11

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Summary:これまで技能は,それ自身が個人の内に閉じた特別な行為との理解が主流であったため,技能それ自身を抽出できて,機械やコンピュータに閉じ込めようとする技能の技術化研究が進められてきた.しかし,精緻に熟練者の技能を観察すると,環境との遭遇以前に何かが決まっているというよりはむしろ,環境との絶え間ない相互作用の結果として創発してきたと解釈すべき事実が多く,まさに生態心理学的な行為理解の視点が示唆に富む.主体と環境との関係の中で結果として組織化された行為という“技能"の理解は,物理環境を他者環境と読み替えることで,師匠-弟子関係のような徒弟制度的な“技能継承"プロセスの説明にも拡張可能である.そこで本稿においては,生態心理学の視点から技能継承をとらえるための技能継承の技術化スキームについて概説する.
ISSN:1349-0443
2434-012X
DOI:10.24807/jep.1.1_11