胃癌の浸潤を伴った胃重複症の1例

胃重複症は先天性の奇形で消化管重複症の1つであるが,稀で本邦報告例はおよそ100例弱である.今回胃重複症に胃癌が合併し,重複胃内に浸潤した1例を経験した.症例は66歳の女性で, 2001年8月胃下部大彎側の胃癌と診断されたが,上腹部CT,エコーで右上腹部に11×6cmの嚢胞性腫瘤を指摘された.胃に付着する嚢胞性腫瘤と共に幽門側胃切除術を施行した.術後の病理組織学的所見で,嚢胞壁には胃の固有筋層に連続した平滑筋が存在し,内面の一部に胃の粘膜上皮がみられ胃重複症と診断した.癌は筋層を越え,重複胃内に連続性に浸潤していた.胃重複症に悪性腫瘍を合併した報告例はわれわれが調べた限りでは本邦が4例,海外で...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 10; pp. 2454 - 2458
Main Authors 菊地, 洋一, 水沼, 廣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.10.2003
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.64.2454

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Summary:胃重複症は先天性の奇形で消化管重複症の1つであるが,稀で本邦報告例はおよそ100例弱である.今回胃重複症に胃癌が合併し,重複胃内に浸潤した1例を経験した.症例は66歳の女性で, 2001年8月胃下部大彎側の胃癌と診断されたが,上腹部CT,エコーで右上腹部に11×6cmの嚢胞性腫瘤を指摘された.胃に付着する嚢胞性腫瘤と共に幽門側胃切除術を施行した.術後の病理組織学的所見で,嚢胞壁には胃の固有筋層に連続した平滑筋が存在し,内面の一部に胃の粘膜上皮がみられ胃重複症と診断した.癌は筋層を越え,重複胃内に連続性に浸潤していた.胃重複症に悪性腫瘍を合併した報告例はわれわれが調べた限りでは本邦が4例,海外で3例であった.本症例のごとく胃癌が重複胃内に浸潤した例は初めてである.胃周囲の嚢胞性疾患では重複胃の存在を念頭に置き診断し,重複胃であれば,癌の合併も考えて摘出手術を行う必要があると思われる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.2454