S-1108のin vitro抗菌力と喀痰内移行および呼吸器感染症に対する臨床効果の検討

• Published in: CHEMOTHERAPY Vol. 41; no. Supplement1; pp. 217 - 230
• Main Authors: 渡辺, 彰, 本田, 芳宏, 徳江, 豊, 北村, 直人, 庄司, 聡, 菊地, 宏明, 本宮, 雅吉, 今野, 淳, 佐山, 恒夫, 新藤, 哲, 本間, 光信
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 公益社団法人 日本化学療法学会 1993
• Subjects: S-1108; 呼吸器感染症; 喀痰移行; 抗菌力
• ISSN: 0009-3165; 1884-5894
• DOI: 10.11250/chemotherapy1953.41.Supplement1_217

S-1108の活性本体であるS-1006のin vitro抗菌力をcefixime (CFIX), cefteram (CFTM), cefaclor (CCL), と比較検討した。また, S-1108の喀痰内移行を検討すると共に呼吸器感染症25例における臨床効果, 細菌学的効果及び安全性を検討して, 臨床的位置付けを考察した。methicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA) とHaemophilus influenzae, Pseudomonas aeruginosa に対するS-1006の抗菌力はCFTMより2管強く, 腸内細菌科 (Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens) に対してはCFTM及びCFIXとほぼ同等であるが, methicillin-resistant S.aureus (MRSA) に対する抗菌力は他剤同様不十分であった。気管支拡張症患者3例に S-1108の200mgを単回経口投与して最高喀痰内濃度は0.03, 0.04, 0.06μg/mlであり, 最大移行比は平均3.98%であった。急性気管支炎4, 急性肺炎14, 慢性気道感染症急性増悪5, その他2の計25例にS-1108を1日300～600mg, 5～15日間投与し, 効果判定可能の22例全例で有効以上を示した。試験開始前にStaphylococcus aureus1, Streptococcus pneumoniae6, Branhamella catarrhalis 6, H. influenzae 3, K. pneumoniae 1, P. aeruginosa 2の計19株を分離したが, 判定可能の17株中14株が治療後に消失し, 他は減少1株と不変2株であった。下痢を3例に認め, 1例は投与中止した。好酸球数増多とGOT・GPT上昇を各4例に認めたが, 投与終了後には正常化した。S-1108は種々の呼吸器感染症に対する有力な第一次選択薬剤と考えられる。