完全内臓逆位症の正常肝に発生した肝細胞癌の1切除例

症例は76歳,男性.上腹部膨満感を主訴に近医受診.左悸肋部から心窩部に腫瘤様の抵抗と圧痛を認め,幽門狭窄を疑われ当院紹介された.胸部単純X線検査にて右胸心を認め,腹部CTにて腹腔内臓器全体が左右逆に存在しており,完全内臓逆位症と診断した.さらに肝臓右葉(患者の左側)に巨大な腫瘍を認めた.血液検査にてHBsAg, HCVAbはともに陰性であったが,腫瘍マーカーはAFP 803ng/ml, PIVKA-II71, 200mAU/mlと高値であった.血管造影にて巨大な腫瘍濃染像を認め,肝細胞癌と診断した.血管の走行には変異は認められなかった.術前にTAEを施行した後,肝右3区域切除術を施行した.組織...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 67; no. 10; pp. 2433 - 2437
Main Authors 澤田, 隆吾, 須浪, 毅, 田村, 達郎, 雪本, 清隆, 阪本, 一次, 山下, 隆史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.10.2006
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は76歳,男性.上腹部膨満感を主訴に近医受診.左悸肋部から心窩部に腫瘤様の抵抗と圧痛を認め,幽門狭窄を疑われ当院紹介された.胸部単純X線検査にて右胸心を認め,腹部CTにて腹腔内臓器全体が左右逆に存在しており,完全内臓逆位症と診断した.さらに肝臓右葉(患者の左側)に巨大な腫瘍を認めた.血液検査にてHBsAg, HCVAbはともに陰性であったが,腫瘍マーカーはAFP 803ng/ml, PIVKA-II71, 200mAU/mlと高値であった.血管造影にて巨大な腫瘍濃染像を認め,肝細胞癌と診断した.血管の走行には変異は認められなかった.術前にTAEを施行した後,肝右3区域切除術を施行した.組織学的には低分化型肝細胞癌であり,背景肝は正常肝であった.今回われわれは完全内臓逆位症の正常肝に発生した肝細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.67.2433