Tazobactam/Piperacillinのヒト糞便内細菌叢に対する影響

新しく開発されたβ-lactamase阻害剤であるtazobactam (TAZ) と注射用penicillin系抗生物質であるpiperacillin (PIPC) の配合比が1: 4の注射剤であるTAZ/PIPC (tazobactam/piperacillin) を健康成人7例に対し2.59, 1日2回, 対照としてPIPCを健康成人6例に対して2.0g, 1日2回いずれも1時間点滴静注で延べ6日間, 実質5日間投与し, 糞便内細菌叢に対する影響をみると共に, 糞便から分離した種々の細菌の接種菌量106CFU/mlに対するTAZ/PIPCとPIPC, sulbactam/ampicill...

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Published inCHEMOTHERAPY Vol. 42; no. Supplement2; pp. 300 - 317
Main Authors 本廣, 孝, 升永, 憲治, 大津, 寧, 池沢, 滋, 松尾, 勇作, 丸岡, 隆之, 半田, 祥一, 長井, 健祐, 山田, 秀二, 沖, 眞一郎, 山田, 孝, 津村, 直幹, 吉永, 陽一郎, 佐々木, 宏和, 織田, 慶子, 荒巻, 雅史, 川上, 晃, 古賀, 達彦, 阪田, 保隆, 富永, 薫, 加藤, 裕久, 山下, 文雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本化学療法学会 1994
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Summary:新しく開発されたβ-lactamase阻害剤であるtazobactam (TAZ) と注射用penicillin系抗生物質であるpiperacillin (PIPC) の配合比が1: 4の注射剤であるTAZ/PIPC (tazobactam/piperacillin) を健康成人7例に対し2.59, 1日2回, 対照としてPIPCを健康成人6例に対して2.0g, 1日2回いずれも1時間点滴静注で延べ6日間, 実質5日間投与し, 糞便内細菌叢に対する影響をみると共に, 糞便から分離した種々の細菌の接種菌量106CFU/mlに対するTAZ/PIPCとPIPC, sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) の薬剤感受性を測定し, 副作用および臨床検査値への影響について検討したところ, 次のような結果を得た。 1.TAZ/PIPC投与例の糞便内細菌叢では好気性菌中EnterobacteriaceaeのEscherichiacoli, Klebsiella sp., citrobacter sp. 等の平均菌数は変化がなく, Enterobacteriaceae全体でも同様であった。しかし, Caseごとにみた場合, 糞便中のPIPC濃度が高い濃度で検出された2例ではEnterobacteriaceaeが投与期間中に一過性に検出限界以下を示し, グラム陽性球菌のEnterococous sp. も同様であった。YLOの平均菌数では増加の傾向はなかったが, Caseごとにみた場合, 1例で投与期間中に一過性に増加した。嫌気性菌の平均菌数では一定の変化はなかったが, Caseごとにみた場合糞便中PIPC濃度が高い2例中1例が投与期間中に一過性の減少を示した。嫌気性菌を菌種ごとに平均菌数でみた場合, Bacteroides fragilis groupの総菌数では投与終了3日後に一過性に減少, Caseごとにみた場合, 糞便中PIPC濃度が高い2例中1例が投与期間中と投与終了20日後まで検出限界以下が減少, 他の1例では投与開始3日後と投与終了3, 5日後に減少, 残りの5例中4例が投与終了3日後に減少した。Eubacteriumでは投与開始5日後に減少, 投与終了3日後には検出限界以下を示し, LactobacmusとLecithinase (Lec.) (+) Clostridiumは投与開始3日後あるいは投与期間中に減少がみられ, Caseごとにみた場合, 糞便中PIPC濃度が高い2例ではこれら4菌種を含む嫌気性菌に対して影響が著しかった。 一方, PIPC投与例では好気性菌中Enterobacteriaceaeをはじめとするグラム陰性桿菌に対しての影響はみられず, グラム陽性球菌のEnterococcus sp.でも変化があるとはいえず, Caseごとにみた場合でもTAZ/PIPC投与例と異なり一定の傾向はなかった。しかし, YLOを平均菌数でみるとTAZ/PIPC投与例と違って投与期間中に増加し, Caseごとでは3例で投与期間中に一過性の増加がみられた。嫌気性菌を平均菌数でみるとB. fragilis groupの総菌数ではTAZ/PIPC投与例と異なって影響はなかったが, Caseごとにみた場合, 糞便中PIPC濃度が高い1例では投与開始3日後のみ減少した。その他の菌数を平均菌数でみるとEubacteriumでは投与終了3日後のみ検出限界以下, Lactobacillusでは変化がなく, TAZ/PIPC投与例とは異なった。Lec.(+) Clostridiumでは投与開始5日後と投与終了3日後, Veillonellaは投与期間中に減少し, Caseごとにみた場合, 糞便中のPIPC濃度が高い1例ではTAZ/PIPC投与例で糞便中のPIPC濃度が高いCaseと同じく前述の5菌種を含む嫌気性菌に対して影響が著しかった。 2.Clostridium difficileはTAZ/PIPC投与例およびPIPC投与例共にいずれの検査日も全例が検出限界以下であったが, C.difficile antigenはTAZ/PIPC投与例では投与開始前と投与終了20日後に1例, 投与終了3日後に2例, 投与終了20日後に1例から500ng/gか1,000ng/g検出されたが, 血清中の中和抗体価の上昇はなかった。PIPC投与例では投与開始前からか, 投与開始5日以後に各々2例が250ng/gか, 1,000ng/gを呈し, 前者の2例中1例と後者の2例で血清中の中和抗体価の有意の上昇がみられた。 3. Bioassay法によるTAZ/PIPC投与7例の糞便中薬剤濃度は2例にTAZとPIPCが測定でき, 1例は投与開始3日後で各々7.80, 287μg/g, 投与開始5日後でそれぞれ8.50, 313μg/g, 他の1例では投与開始3日後のみ各々10.6, 809μg/gを示した。PIPC投与の6例の糞便中濃度では1例のみが投与開始3日後に276μg/gを示し, 他のCaseはいずれの検査日も検出限界以下であった。なお, 両薬剤投与例は検査日のいずれでも糞便中のβ-lactamase活性はニトロセフィンスポットプレート法, アシドメトリー法共に陽性であった。 4.TAZ/PIPC投与例の糞便から分離されたグラム陽性球菌中のEnterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Enterococcus aviumに対するTAZ/PIPCのMICはいずれもPIPCのMICと同じか類似し, sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) のMICより大の傾向を示した。
ISSN:0009-3165
1884-5894
DOI:10.11250/chemotherapy1953.42.Supplement2_300